昨今、スナック菓子でも限定フレーバーとして人気の高い「ゆずこしょう」。日々の料理の調味料・薬味として、冷蔵庫に入っているかたも多いはず。でも、すべて使い切る前に賞味期限を迎えてしまった……という残念なケースも多々ありそう。そんなゆずこしょうを「使い切れる調味料に!」と活動をされているのが、ゆず胡椒研究家・あおさん。今回はあおさんに、ゆずこしょうの魅力はもちろん、その活動内容について詳しく伺いました。
目次
- ゆずこしょうとの運命の出会い
- 語っても語りきれないゆずこしょうの魅力
- メディアが持つそれぞれの役割
- 製造者じゃないからこそできた協会の発足
- パッケージでは伝わらない製造者の想いを消費者へ
ゆずこしょうとの運命の出会い
おいしすぎたゆずこしょう
「ゆずこしょうとの出会いは、両親が九州に旅行した際のお土産だったんです」と、ゆず胡椒研究家・あおさん。幼少期から食に興味があったそうですが、なかでもゆずこしょうとの出会いはとても衝撃だったとか。
「わが家は両親と祖父母で同居していました。祖父がパン屋さんで働いていたので、よくパン生地を持って帰ってきてくれて。幼稚園のころから、いっしょにパンを作って焼いた記憶があります。なので、子どものころから料理そのものが身近な存在で、食に対しても自然と興味を持っていました」
「ゆずこしょうとの出会いは2009年ごろ。20代半ばごろのときでした。両親が九州に旅行にいって、九州土産として買ってきてくれたんです。ゆずこしょうの『こしょう(胡椒)』は、唐辛子のこと。九州では唐辛子のことを『こしょう(胡椒)』と呼ぶことが由来です」
「九州では100年近くの歴史があるゆずこしょうですが、当時はまだそこまで全国展開されていないころ。岐阜で生まれ育った私にとっては、これが初対面でした。
ゆずこしょうといっしょに、同じく九州名物の“からし蓮根”も買ってきてくれたのですが、初めて口にしたゆずこしょうに『なにこれ!? おいしい!』と夢中になりすぎて、からし蓮根の記憶はあまりなく(笑)。気がつけば、ゆずこしょうのとりこになっていました」
「ゆず胡椒研究家」になるまで
以来、ゆずこしょうがずっと身近にあったというあおさん。運命の出会いから10年後の2019年、ついに「ゆず胡椒研究家」として活動をスタートさせます。
「2019年11月に『柚子胡椒マガジン』をスタートさせました。もともとレシピブログをやっていて、以前はアイラップ(※)を使ったポリ袋調理について発信していたのですが、このまま続けていていいのだろうか?と悩んでいて……。
なにかアドバイスをもらいたくて、相談会のようなオンラインサロンに入会したところ、『もっとなにかに特化した内容のほうがいい。せっかくなら、自分の好きなものをテーマにしたほうが続けやすいよ』とアドバイスをいただきました。だったらゆずこしょうしかない!と思ったのが、路線変更のきっかけですね」
※アイラップ……岩谷マテリアルが販売している、食品用の耐熱・耐冷のポリ袋。湯せん調理や電子レンジ加熱ができるなど、用途が広いロングセラー商品
「当時調べたら、まだまだゆずこしょうをテーマに活動している人が少なく、ますますこれだ!と。それを機に『ゆず胡椒研究家』と名乗るようになりました」
しかし、当初の肩書きはいまと微妙に違ったそう。
「最初は『ゆずこしょうマイスター』と名乗っていたんです。でも『マイスター』って、なんだかうさんくさくない?と(笑)。じゃあどうしよう……と考えて、行き着いたのが『研究家』でした。
でも今度は『柚子胡椒研究家』だと、漢字が7つ並ぶことになんだか威圧感を感じて……(笑)。悩んだ挙げ句、『ゆず』をひらがなにして『ゆず胡椒研究家』にしました。本当は『胡椒』もひらがなにしたいところなんですが、肩書きの文字数が長くなりすぎるのもどうかな、と。これはもうしょうがない!と割りきって、いまの肩書きに落ち着いています」
語っても語りきれないゆずこしょうの魅力
合うのは和食だけじゃない!
肩書きにもこだわりを持ち、ゆずこしょうへの熱い思いを発信し続けているあおさん。その魅力を語っていただきました。
「一番伝えたいのは、『汎用性の高さ』。意外ですよね。日本の薬味というイメージが強いゆずこしょうですが、和食はもちろん、各国の料理とも相性がいいんです。
例えば、タイ料理のグリーンカレー。グリーンカレーペーストの代わりにゆずこしょうを使って、ココナッツミルクとナンプラーで仕上げれば、ちょっと和風なグリーンカレーになります。
グリーンカレーペーストにはレモンと唐辛子が使われていて、ゆずこしょうの材料はゆずと唐辛子。〈かんきつ類×唐辛子〉というところで、じつは味の構成が似ているんです。あと、メキシコ料理のサルサ。サルサソースの辛味としてゆずこしょうを使うと、さわやかな香りで夏にぴったりの味わいになりますよ」
「もちろん、おかずだけではありません。甘いものにもすごく合うんです。私は、あんことゆずこしょうの組み合わせが大好き! 正直、甘いものはあまり得意ではないのですが、〈甘い×しょっぱい〉なら話は別(笑)! アイスクリームやチーズケーキに使うのも鉄板です」
「これって、わさびや辛子にはない魅力だと思うんです。逆にゆずこしょうと合わないのは、香りが強い食材。例えば、ごまやラムレーズンがそうですね。せっかくのゆずこしょうの風味が消えてしまうので、少量だったらいいですが、どちらの風味も生かして調理するのは、ちょっとむずかしいかもしれません」
バラエティ豊かな「ゆずこしょう」
最近では、各メーカーさまざまなゆずこしょうを販売していて、その特徴は千差万別。
レシピ考案だけではなく、それぞれの商品にもお詳しいあおさん。いま注目している、おすすめゆずこしょうを2つ教えてもらいました。
【1】「吹屋の紅てんぐ・洋風ゆずこしょう」48g 700円(税込)/佐藤紅商店
佐藤紅商店は、唐辛子の栽培から行っている製造会社とのこと。
「岡山県高梁市にある、『吹屋ふるさと村』というベンガラ(※)の街並みを保存している地域で、ベンガラにちなんだ赤い製品を作りたいという思いから、赤唐辛子を使った商品をたくさん販売されています」
※ベンガラ……銅山で産出される鉱石(酸化第二鉄)を原料とする赤色顔料。陶磁器や漆器への着色や、建造物などへの防腐塗料としても使用される。岡山県高梁市にある吹屋は、町全体が弁柄(ベンガラ)色の外観で統一されており、日本の重要伝統的建造群保存地区に選定されている
「佐藤紅商店さんのゆずこしょうは、塩分量が4%と少ないのが特徴。一般的なゆずこしょうが約20%といわれているので、1/5ですね。でも不思議と物足りなさはないんです。
特にこの『洋風柚子胡椒』は、しっかりとした酸味があります。皮をむいたあとのゆずの果汁をたっぷりと使って、赤唐辛子を混ぜて作ったもの。唐辛子の辛味も強く、ペッパーソースに近い味わいなので、私はトマトケチャップと混ぜてフライドポテトにつけたり、ピザやパスタにかけたりしてよく食べますよ。いままでのゆずこしょうの概念が変わるような逸品です」
【2】「生ゆず胡椒 大吟 黒」55g 1800円(税込)/フミ子の生ゆず胡椒
「ご夫婦で運営されているメーカーさんです。ご主人のお母さまが手作りしていたゆずこしょうのレシピを継承して、商品を展開されています」
「ゆずこしょうって冷凍保存ができるんです」とあおさん。
「この『生ゆず胡椒』は、はじめから冷凍販売しているのが特徴。そのため、賞味期限が長くて、塩分濃度がしっかりあるので冷凍しても固まらず、凍ったまま使えますよ。
『生ゆず胡椒』の商品ラインナップは、主に4種類。時期によって期間限定も販売されますが、私のおすすめは『生ゆず胡椒 大吟 黒』。ふつう、ゆずこしょうの『こしょう』は、唐辛子のこと。でもこの『生ゆず胡椒 大吟 黒』は、唐辛子ではなく黒こしょうを使っていて、なかなか斬新! 黒こしょうならではのパンチがあり、私はチーズに合わせて食べるのが大好きです」
「ゆずこしょう」とひと言でいっても、そのバリエーションはさまざまで奥深いことがわかります。
※掲載している商品情報や金額は2024年9月現在のものです
メディアが持つそれぞれの役割
特徴をつかんで流れを意識
公式サイト『柚子胡椒マガジン』のほか、『Yahoo!ニュース エキスパート』でのレシピ連載やYouTube、Instagram、Podcastなど、複数のメディアで精力的に活動されているあおさん。それぞれの運営について伺いました。
クリエイター
1985年富山県生まれ、岐阜県出身。九州へ旅行へ行った両親からのお土産で、“ゆずこしょう”と出会い、とりこになる。 使いきれない調味料の代表といわれるゆずこしょうを、「使いきれる調味料」に変えるために、ブログやSNSでゆずこしょう情報を発信中。
フリーライター。大学卒業後、編集プロダクションを経て、フリーランスに。インタビューや生活まわりの記事を中心に執筆・編集を行っているが、基本的には「なんでも書きます」の雑食系ライター。