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モデル業も料理も。「美菜屋」浅野美奈弥さんがお弁当に込める思い

モデル業も料理も。「美菜屋」浅野美奈弥さんがお弁当に込める思い

浅野 美奈弥, 児玉 知子

撮影現場でもよく利用されているケータリング「美菜屋(みなや)」。野菜が豊富でおいしくヘルシーなのはもちろん、彩りがよくかわいい見た目も大人気。「今日の昼食は美菜屋です!」という一言で現場がワ~ッと湧き、スタッフのやる気もグッと上がります。今回は、モデル兼「美菜屋」代表・浅野美奈弥(あさの みなみ)さんに、ケータリング業を始めたきっかけや、お店を運営してくうえで大切にしていることなどを伺いました。

目次

  • モデルだから気づけた、撮影現場で求められるお弁当
  • スタッフの意見も柔軟に取り入れつつ、お客さまの視点を一番に
  • 見ている人を楽しませるSNSの発信
  • 食べ物の大切さや生産者への感謝を忘れない

モデルだから気づけた、撮影現場で求められるお弁当

撮影現場やイベント、会議などの昼食で頼むことが多いケータリング。「ちょっと特別な日」に利用されることが多い食事だからこそ、注文を任された人も気合が入ります。「美菜屋」のケータリングでは、そんなシーンにぴったりのお弁当がラインナップ。

「『美菜屋(みなや)』という名前には、『美しい菜を食べる』『菜を食べて美しくなる』という思いを込めています。基本は野菜中心のお弁当ですが、食べるのは女性だけでなく男性もいらっしゃいますし、長丁場や体力が必要な現場の人にも満足していただけるよう、ボリューム感や食べごたえも意識して作っています。

これは、自分自身がどんなお弁当が出てきたらうれしかったとか、こういうふうなサービスがあったらうれしいとか、自分がモデルとして実際に現場の様子を目にしていたからこそ、気づけた部分ですね。『美菜屋』の強みの一つになっていると思います」

そしてなにより「美菜屋」といえば、彩りのいいかわいいビジュアルも大好評。

「彩りがいいということは、いろいろな野菜を使っていて、たくさんの栄養素が詰まっているということ。心も体もしっかり満足できるお弁当なんです」

心も体も喜ぶお弁当。種類もたくさんあって、予算に合わせて選ぶことができるのも嬉しいポイントです。

「おかずの種類が増えるごとに価格が変わっていき、おかずの種類は8種類のものから14種のものまでご用意しています。朝ごはんにちょうどいい、肉or魚+副菜が3種の小ぶり弁当もあるんですよ」

お弁当の種類
ふたを開けた途端、思わず笑顔になりそうな、彩り豊かなお弁当

「その他、おにぎりやサンドイッチなどの軽食もあります。最近力を入れているのはドリンクと焼き菓子。ドリンクはお弁当に合うお茶だけでなく、自分たちでセレクトした地方名産のジュースなども販売しています。焼き菓子はお店で焼いていて、撮影中のおやつとして、焼き菓子だけを注文してくださるお客さまも増えているんです」

ゼロからのスタート。独学で「食」の知識を身につけ、会社を起こすまで

体を崩してやっと気づいた、食の大切さ

そんな浅野美奈弥さんですが、以前は食についてあまり意識しておらず、そのため体を崩したこともあったのだとか。

「学生時代からモデルをしていて、ふだんから『どうやったら体重を落とせるか』ということばかり考えていました。ちゃんとした知識もなく、食事の大切さにも気づいていなかったので、断食ダイエットや流行りの単品ダイエットもやっていましたね。それで体調を崩してしまいました。

食生活が乱れて、体にストレスがかかっていたのが原因だと思います。これをきっかけに、食事の大切さに気づきました。栄養をしっかりとって、時には好きなもの、食べたいものを食べてストレスをなくす。これこそ健康的に美しいスタイルを維持するポイントなんですよね」

おいしそうにご飯をほおばる浅野美奈弥さん。食事は体の栄養だけでなく、心の栄養にも欠かせません!

「上京して一人暮らしを始めた当初は、たまに自炊する程度でした。体調を崩してからは、食べるものに気をつけるようになり、できるだけ自炊を心がけるようになりました。食の大切さに気づき、栄養バランスのいい料理を広めたい、と考えたんです」

兼業のむずかしさと、背中を押してくれた仲間たち

自らの理想とする料理を提案するため、モデル業のかたわら、料理家を目指した浅野美奈弥さん。初めはなにもかもが手探りだったそう。

「本当はきちんと料理の勉強をしたくて、料理の学校に通いたかったのですが、モデルもしていたのでなかなかむずかしく……。料理は独学で勉強しました。

まず行動したのは、資格や検定の取得。フードスタイリストやダイエット検定、スーパーフードスペシャリストの資格をとりました。料理に目覚めたのと同時に運動も始めたので、スポーツフードスペシャリストの資格もとりましたね。そして、料理家さんのアシスタントも1年くらいやらせていただきました」

料理家になり、満を持して始めたケータリング業……と思いきや、意外にも当初ご自身にそんなつもりはなかったのだとか。

「きっかけは、料理イベントの開催でした。お店を間借りして、モデル仲間やお仕事関係の人を呼んで、『私の作ったごはんを食べましょう』という企画を開催したんです。すると回を重ねるごとに口コミが広がって、『こんどロケ弁を頼んでいいですか?』とお問合せをいただくようになって。

だから正直、『ケータリング会社を始めるぞ!』とスタートしたわけではないんですよ。でも、『今まで自分がお世話になった場所になにか還元したい、力になりたい』という思いはずっとあったので、思い切ってチャレンジしてみることにしました」

一歩ずつ着実に。アパートの一室から始まったケータリング業

そうしてケータリングを始めたのが2018年。当初はアパートの一室を借りて、たった一人で全てをこなしていたそう。

一人で仕込んでいたたくさんのお弁当
当時たった一人でもくもくと仕込んでいた弁当。この量を一人で……となると、本当にすごい!

「それまで、モデル以外の仕事経験がまったくなかったので、なにをするにも大変でした。最初は請求書一つを作るのにもひと苦労……。もちろん仕入れ業者なども知らないので、リュックを背負ってスーパーを何往復もして食材を買っていましたね。少しずつ慣れてきたころ、ありがたいことに注文していただく数も増えてきたので、2019年に会社を設立。それが今の『美菜屋』です」

でも会社を作るのに、避けては通れないのが資金繰り。

「最初に借りたのは、ワンルームアパートの一室。賃貸料も安かったですし、自分で食品衛生責任者の資格を取り、営業許可も取得したので、そんなに大金はかかっていないんですよ。

でも会社にして、スタッフを雇って……、となってからはすごくお金がかかっていますね。いきなり大金を準備するのは大変だと思うので、売り上げが増えたら次のステップへというふうに、徐々に段階を踏んで組織や会社を大きくするのがポイントだと思います。今の店舗も、発注が増え、スタッフが増え、調理場が少し手狭になってきているので、これからまた考えたいなと思っています」

長期的に安定した営業をするには、組織づくりが必須

クリエイター

ケータリング「美菜屋(みなや)」主宰。1991年生まれ、北海道出身。シアトルへの留学を経験して帰国後、大学に通いながらモデル活動を始め、DJなど幅広く活動。2016年に体調を崩したことをきっかけに、スポーツと食で健康的な生活を見直すことを決意し、料理家を目指す。モデルを続けながら、2019年にケータリング「美菜屋」を始動。栄養バランスがよく、華やかなビジュアルのメニューを提案している。

フリーライター。大学卒業後、編集プロダクションを経て、フリーランスに。インタビューや生活まわりの記事を中心に執筆・編集を行っているが、基本的には「なんでも書きます」の雑食系ライター。

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