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開業して3年目。おこめちゃんのキッチンカーの始め方

開業して3年目。おこめちゃんのキッチンカーの始め方

おこめちゃん, 晴山 香織

キッチンカー「お米がおいしいごはん屋さん」を運営する、28歳のおこめちゃん。以前は会社員として勤務し、「このまま生活して行くんだろう」と思っていたところ、コロナ禍や、自らがおいしさに感激した「南魚沼産のコシヒカリ」との出会いがあり、キッチンカーを開業することに。現在2周年を迎え、「やりたいと思ったことを行動に移して、やってみて本当によかった!」と振り返るおこめちゃん。飲食店未経験から試行錯誤して進んでいく姿を追いかけました。

目次

  • 自己資金でできると選んだのがキッチンカーだった
  • 初心者でも、とにかくやって、改善しながら進んでいく

自己資金でできると選んだのがキッチンカーだった

好きな「料理」を仕事にするために

小さな軽トラックで料理を作って、販売する。おこめちゃんは、3年前の2020年にそれまでのハウスメーカーでの仕事をやめ、キッチンカーという自分だけの仕事場を手に入れました。

おこめちゃんが運営するキッチンカー「お米がおいしいごはん屋さん」のロゴ。イメージにぴったりの文字をネットで探し、書き手のかたに直接依頼したそう

「特別に大きなきっかけがあったわけではありません。でも、仕事をしながらずっと『何かやりたい、自分の得意なことや好きなことを仕事にしたい』と思っていました。料理を作るのも食べるのも好きだったので、キッチンカーをやってみようと思い立ったんです」

会社勤めをしていたころは、周りにランチに行けるお店が少なく、お昼ごはんをコンビニで買ってくることが多かったのだそう。サラダと麺やおにぎり、というありきたりの見た目と味に飽きてしまっていたと振り返ります。週に1回でもおいしく食べられるランチがあれば、それを楽しみにがんばって働けるのに、と。同じ思いをしている人たちに、おいしいごはんを提供したい。楽しみになるランチを作れたら……そんな思いで、料理を仕事にしてみたいと考えたのだそう。とはいえ、自分の料理を食べてもらうには、店舗を構えるという選択肢もあったはずです。

キッチンカー開業日記のイラスト
Instagramでは出店スケジュールだけでなく、「キッチンカー開業日記」として経験談を投稿(@kitchencar.okome

「自分の貯金でまかなえる範囲で、始めたいと思いました。店舗を持つこともちらっと考えたのですが、とてもじゃないけれど資金が足りません。ローンを組んだりすると、それがプレッシャーになるので嫌だな、と。それまで、飲食店で働いたこともなければ、料理にまつわる仕事をしたこともありません。経験も潤沢な資金もない状況で始めるからこそ、もし失敗して辞めることになったときに、借金がないほうがいい。自己資金だけでやりくりできるようにキッチンカーを選んだんです」

幸い、茨城市内にキッチンカーを販売する会社もあり、自身の希望する内容でオーダーすることができるとわかりました。当初は大きな車でと考えていたものの、実際に一人でやるには広すぎると感じたのだそう。

「誰かを雇うつもりはなくて、一人で自由にやりたかった。コックピットのように、手を伸ばせばすべてできるようにするなら、軽トラックで充分だという結論に至りました」

軽トラックをベースに、最終的にでき上がったおこめちゃんのキッチンカー。車体は真っ白ではなく、生成りっぽい色みに塗り替え、木を基調としたやさしい印象に
製作途中のキッチンカー内。奥には電気系統や水道も完備
看板はおこめちゃんの手書き。お米をはじめ、食べものやお客さんに対しての愛が伝わります

南魚沼産のお米のおいしさを伝えたい! という思い

一方、おこめちゃんには、「お米がおしいしいごはん屋さん」という名前の由来にまつわる出会いがありました。会社勤めをしながら、なんとなく料理を仕事にしたいと考えていたころに出会ったのが、南魚沼産のコシヒカリ。

「ある日、スノーボードをしに行った先で食べたご飯が、あまりにおいしくて感動して。お店のかたに聞いたら、南魚沼産のお米だと教えてもらったんです。このおいしさを、もっとたくさんの人に知ってもらいたいという気持ちも、キッチンカーを始める理由の一つになりました。こんなおいしいごはんが炊けたら最高だな、と。そして、このおいしいごはんに合うおかずも、いろいろとアイディアが浮かびそうだとも思いました」

南魚沼産コシヒカリ
おこめちゃんがおいしくて感動したという、南魚沼産コシヒカリ

自分の料理をおいしいといえる強さと、おいしいと感じた味を信じる気持ちが後押しとなって、進んでいくことになったのです。

軽トラックを使ったキッチンカーをどういう仕様にするかを考え、相談して製作してもらいながら、同時にお米の調達や料理の試作をする日々が始まりました。

「お米は大事な存在です。でも、どこに連絡して仕入れたらいいのかわからなかったので、まず南魚沼市に連絡しようと思いました。とはいえ、ただ電話するわけにもいかないので、きちんと事業計画書を作って、自分の熱意を伝えられるように書面にまとめて、お問い合わせフォームから送ったんです」

すぐに市役所の担当者から連絡があり、詳しい内容を説明。おこめちゃんが一人で運営するキッチンカーなので、一気に大量仕入れをするわけではありません。小さな規模でも対応してくれる農家さんを紹介してくれることになり、「こまがた農園」さんと繋がりができました。

こまがた家のお米
JAみなみ魚沼青年部のかたから紹介を受け、仕入れさせてもらっているという「こまがた家のお米」。南魚沼市で1780年以前からの歴史ある農家で、農薬や化学肥料をなるべく使わず栽培している

「私にはお米の在庫を置く場所もなければ、それをさばける自信もない。なので1週間ごとにこまめに仕入れるのが理想ですが、農家さんにとっては、1週間ごとに出荷するというのは手間だと思うんです。でも、こまがた農園さんは親切に対応してくださって、本当に助けられています」

わからなければ、聞いてみる。出店場所も自身で確保

さらに、大切なのはどこにキッチンカーを出店するかということ。車を停められるスペースがあること、人が集まってくる場所か、集まっても近隣に迷惑にならないかなど、さまざまな条件が重なってきます。すべてを叶える出店場所を探すのは大変だったのではないでしょうか。

クリエイター

茨城県内にて、自身が魅了された南魚沼産のコシヒカリにこだわった料理を作り、自ら運転するキッチンカー「お米がおいしいごはん屋さん」で販売している。日々の営業やこれまでの開業日記はInstagramにも綴っていて、屈託のない素直な投稿が人気。

フリーライター。出版社オレンジページに入社し、生活情報誌『オレンジページ』『オレンジページ インテリア』の編集を担当したのち、フリーランスに。暮らしやインテリア、カルチャーを中心に、雑誌や書籍、WEBで執筆・編集を行う。

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