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間借り営業のカレー屋「ザ・モチベーションショップ」の斬新な店づくり

間借り営業のカレー屋「ザ・モチベーションショップ」の斬新な店づくり

メイドインアリサ, 佐々木 早貴

大阪府大阪市北区にあるバー「ゆとりちゃん」を間借りして営業するカレー屋「ザ・モチベーションショップ」。通称「ザモチ」。お店のコンセプトは「モチベーションの上がるカレーと癖靴下(くせくつした)とかのお店」とユニーク。メインは、店主・メイドインアリサさんが作るカツカレーで、お昼どきには行列ができる人気間借り店です。間借り営業の魅力や、メイドインアリサさんのカツカレー愛についてお聞きしました。そして、謎の“癖靴下”とはいったい……!?

目次

  • 好きなことを仕事にする
  • メイドインアリサさんが考える「間借り営業」
  • カツカレーを広めたい! メイドインアリサさんのカツカレー愛
  • これがザモチの生きる道

好きなことを仕事にする

スーパーフリーターに憧れて

お気に入りの服や靴を身にまとって、毎日お店に立つメイドインアリサさん。大阪市北区にあるバー「ゆとりちゃん」を間借りして営業するカレー屋「ザ・モチベーションショップ」の店主です。

間借り営業のカレー屋「ザ・モチベーションショップ」店主・メイドインアリサさん
間借り先のバー「ゆとりちゃん」の外観はそのままに、「ザ・モチベーションショップ」の提灯と看板を出している
店内の様子。座席は7席のみ

店名や活動名ですでにユニークさが伝わりますが、メイドインアリサさんのこれまでの道のりも、とても魅力的。元々ファッションが好きで、高校はファッション工学科に通っていたそう。

お気に入りの服で、凛と立つ姿がかっこいい

「高校生のときに、アメ村(※)にあるコンビニでバイトしてたんです。服や靴とかもすごく好きだったんですけど、バイト先のコンビニに常連のお客さんがいて。そのかたが、近所のタピオカ屋のオーナーだったんですよ。同じアメ村内で」と話してくれるメイドインアリサさん。

※アメ村……大阪市中央区西心斎橋地区“アメリカ村”の通称。古着屋や衣料店、レコード店などが並ぶ若者の街

「そのかたに誘われて、高校卒業後はそのタピオカ屋さんに就職しました。トータルで6~7年間、アメ村にいたんですけど、徐々にアメ村の若さに自分の年齢が合わなくなってきたんです。ここは私がいる場所じゃない、これだけで人生が終わるのはもったいないと思って、タピオカ屋さんを退職しました。

私、三姉妹なんですけど、姉がスーパーフリーターみたいにいろんなバイトを掛け持ちして、すごく楽しそうにしていたんです。それを見ていたら、『私もこんな働き方がしたいな』と思って。これからは好きなことを仕事にしていこうと、いろんなバイトをするようになりました。

まずはドーナツ屋さん。『なんの仕事してんの?』って聞かれたときに、『ドーナツ屋さんで働いている』ってなんかかわいいなと思って(笑)。あと、ファミコンとかレトロゲームが好きだったので、レトロゲーム専門店でも働きました。ほかにもヴィレッジヴァンガードの店員とか、覆面調査員のバイトとかも。

その流れで、音楽も好きだったのでタワーレコードでバイトを始めたんです。いま思えば、タワレコで働き始めたことが、すべての始まりといえるかもしれないですね。いま間借りさせてもらっているバー『ゆとりちゃん』店主・換気扇さんもタワレコの元スタッフなんです」

ここで登場する“換気扇さん”も、もちろん活動名。バーや会社を経営し、イラストを描いたり、デザインをしたりと多才なかただそう。メイドインアリサさんのまわりも、どうやら才能あふれるユニークなかたが多いご様子。

カレーとの出会い

タワレコで好きな音楽に囲まれながら、週5日のフルタイム勤務で働き始めたメイドインアリサさん。しかし……

「間違いなく、人生で一番楽しくきらめいた職場。ここで働いてなかったら出会えてない人だらけ」とメイドインアリサさん

「音楽業界の不況の波というか、人件費削減!みたいになっちゃって、急に『明日から週2日でお願いします』って言われてしまったんです。一人暮らしで生活もかかっていたし、もうどうしよう~と思いながら、とりあえず食事をしようとたまたま入ったカレー屋さんに、バイト募集の張り紙がしてあって。もう反射的にですね。『ここで働かせてください』『ほな明日から来る?』って即採用になりました(笑)」

この採用がきっかけで、現在運営しているカレー屋「ザ・モチベーションショップ」が誕生することに。店名の由来は「カツカレーを食べてモチベーションを上げてもらいたいから」

昼はカレー屋、夜はタワーレコード、とバイトを掛け持ちしますが、次第にタワーレコードのシフトが減っていき、カレー屋一本に。

「カレー屋といいつつ、お酒も提供するお店だったので、お酒のアテや一品料理も作って出していました。決まったレシピがあってそれを作る……とかではなく、自分で考えたものを提供できたんです。そこにやりがいを感じて、気づけば8年も働いていました」

自分の好きなことや、やってみたいという気持ちに素直に向き合ったことで、つながっていったご縁。「好きなことを仕事に」と思ったことが、メイドインアリサさんにとっては転機だったようです。

通称「ザモチ」と呼ばれる「ザ・モチベーションショップ」。その由来は、メイドインアリサさんが好きなお笑い芸人・ハリウッドザコシシショウさんの通称「ザコシ」から

メイドインアリサさんが考える「間借り営業」

ここで、「間借り営業」について簡単に説明すると、既存店舗の定休日やアイドルタイム(※)にその場所を借りて営業すること。初期費用を抑えられることや、集客のしやすさなど多くのメリットがあります。一方で、店名を大きく出すことや設備・レイアウトの変更が簡単にはできないこと、また、何かあった場合には借主だけでなく貸主にも責任が発生してしまうなど、慎重に検討すべき点もさまざまあります。

※アイドルタイム……飲食業界においてのアイドルタイムは、ピークタイム以外の時間帯のこと。例えば、ランチとディナーのあいだの時間や、深夜から早朝などの時間のことを指す

間借り営業のきっかけ

メイドインアリサさんは、どんな経緯で間借りすることになったのでしょうか。

クリエイター

大阪・北区のバー「ゆとりちゃん」を間借りするカレー屋「ザ・モチーベーションショップ」店主。お昼どきには行列ができる人気間借り店。カツカレーをこよなく愛し、フリーペーパー『カツカレー図鑑』を自費出版。最近はフードイベントの監修を行うなど、活動の幅を広げている。

フリーライター。大阪在住。大学卒業後、株式会社オレンジページでアルバイトとして現場や料理を学んだのち、兵庫県・神戸の帽子ブランド「mature ha.」に就職。退職・出産を経て、ライターとして活動開始。好きか嫌いかはひとまず置いといて、とりあえずやってみるタイプ。今日も夕飯の献立を考えながら暮らしている。

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