Articles
パンオタク・pata.さんのパン愛から生まれるアートのような投稿

パンオタク・pata.さんのパン愛から生まれるアートのような投稿

pata., 夏木 紬衣

おいしいパンを求めて全国各地に足を運び、パン屋をめぐること300軒以上。年間350日パンを食べるpata.(ぱた)さん。自身を「パンオタク」と称し、Instagramでパン情報や、パンアレンジを発信中。パンの写真に添えられる雰囲気のある手書き文字もあいまって、統一感のある世界観で人気です。投稿の工夫と、現在開催している「パン好きのための間借り朝ごぱん」のお話を伺いました。

目次

  • 愛するパンで満たされる暮らし
  • pata.ワールドが広がるパン写真の技法
  • “好き”でふくらむご縁とパンライフ

愛するパンで満たされる暮らし

Instagramでランダムに表示される投稿をスクロールしていると、思わず目に留まったのがシズル感あふれるpata.さん(@pata._pan)のパン写真。そこには手にとって味わうときにしかみられない、隠されたパンの内面が魅力的に写しだされていました。

クリームがとろけ出る瞬間が美しい

あらわになったパンのそばには、pata.さんの手書き文字が添えられ、まるでアート作品のように目を惹きつけます。

おいしいパンを求めて全国各地へ

pata.さんは全国のパン屋をめぐること300軒以上。初期の投稿では、福岡県にあるパンの投稿が目立ちましたが、今は東京や長野などのパンもピックアップされています。

Instagramでパン情報を発信しているpata.さん

pata.さんはどのようなライフスタイルをおくっているのでしょうか。

「結婚を機に、生まれの福岡から東京へ。そして2024年春には、夫の転勤を機に長野県の軽井沢に移住しました。現在は東京でお仕事をすることもあるので、軽井沢と東京、あとは頻繁に帰る福岡を加えて、3拠点での投稿が多いかなと思います」

pata.さんはいつも楽しそうにパンを選ぶ

Instagramでパンの投稿を頻繁にされているpata.さん。東京から福岡まで、アクティブにパン屋めぐりをしているそうですが、どのくらいのペースでパン屋に足を運んでいるのか気になります。

「福岡での会社員時代は、休みの土日を利用して週に2~3軒、多くて6軒めぐっていました。開店の1~2時間前に並んでパンを購入してハシゴしていると、気づいたら夕方になっていたり(笑)。

帰宅後の撮影時間を含めると、休日のほとんどの時間をパンに費やしていました。デザインに落としこむのも好きなので、ひたすらパンのことを考えている休日の時間が楽しかったですね」

ハード系から菓子パンまで、さまざまな種類があるパン。数あるパンからとっておきを選びだす、“パンの目利き”はどのようにして培われたのでしょうか。

「Instagramのフォロワーさんをはじめ、周りにパン好きさんや、パン友達がたくさんいて。おすすめのパン屋さんを聞いたり、DMでいただくイチオシのパン屋さん情報を参考にしたりしています。

SNSやWebでリサーチすることもありますが、パン屋さんに対するコメントは、じつはあまり重視していません。特に、ネガティブなコメントを、100%鵜呑みにして信じることはないですね。実際に自分で足を運んで、自分の目でパンを見る。そうすると、『あ、ここすごく素敵だな』って思うことが多いんです」

パン友といろんなパンを持ち寄って楽しむことも

「気になったら、とりあえず足を運ぶようにしています」と続けて語り、おっとりとした雰囲気とはギャップを感じる、フットワークの軽さをうかがえます。

「パン好きさんから『これがおすすめだよ』と教えてもらったパンは、積極的に購入します。映え重視でパンを選んでいると思われがちですが、食べてみて本当においしかったものしか投稿していませんね。

1店舗あたり8~10個購入したり、一度のお会計が5,000円したり、ということもあります。とりあえず気になったパンは全部買っちゃうので(笑)、パン選びに迷うことはなくパパッと買っちゃいますね」

pata.さんは事前に購入するパンを決めず、おすすめされたパンや、実際に見て自分が惹かれたパンを手に取ると話してくれました。優柔不断がゆえに、あらかじめ購入するパンに目星をつけておく筆者とは真逆で、新鮮な声でした。

パン好きのフォロワーからもらう“生の声”を信頼し、大切に扱うからこそ、pata.さんは臨場感のあるパン紹介ができるのです。

幼いころからパンが好き

多種多様なパンを食べているpata.さん。そんなpata.さんを形づくった、記憶に強く残っているパンを伺ったところ、“パン好きになったきっかけ”にもつながっているようで……。

「思い返すと、やっぱり食パンですかね。高校生とか大学生のころは、ふつうに近所のスーパーで食パンを買っていて。そもそも、“パン屋さんで食パンを買う”という発想がありませんでした。

なので、初めて『pain stock(パンストック)』の食パンを食べたとき、『パン屋さんの食パンってこんなにおいしいんだ!』と衝撃を受けたのを覚えています」

パン好きになったきっかけの食パン。福岡県福岡市に1号店を構える『pain stock(パンストック)』のもの

学生時代に出会ったこの食パンはいまでも大好きで、『pain stock』に度々訪れるそう。さらに記憶を振り返ると、小さいころから“ごはんよりパン派”だったというpata.さん。

「母に『毎朝パンがいい!』といっていました(笑)。通っていた幼稚園の近くに、『東京堂製パン』という老舗のパン屋さんがあって。幼稚園の給食に、週1~2回、そのパンがでていたんです」

『東京堂製パン』のパン。懐かしさを感じるパッケージに、つい手がのびるそう

「なかでも、野菜や卵をはさんだコッペパンのようなサンドイッチは、とってもなじみ深くて、給食に出てくるのが楽しみでした。中学生のころも、売店で『東京堂製パン』のパンを見かけていて身近な存在だったので、小さいころからパン好きでしたね」

Instagramでの投稿をはじめる前の幼少期~学生時代。パン好きとして注目を集める、現在の片鱗がすでに見えています。前述の『pain stock』の食パンに出会ったことをきっかけに、“休日はパン屋に”という生活になっていったそう。さらにpata.さん、料理が好きなこともあり、栄養士の資格も取得しています。

pata.ワールドが広がる“パン写真”の技法

pata.さんのInstagramの投稿は、パンの断面と手書き文字を組み合わせた、唯一無二の個性が光ります。

ほれぼれするほど魅力的に写るパンに、雰囲気のある文字。写真1枚が一つの作品のよう

パンの美しさを最大限に引きだす撮影テクニックや、手書き文字を通して伝える表現の工夫はどのようにして磨かれたのでしょうか。

写真、文字、デザインを通じた表現者としての一面

【画像の編集とデザイン】

「以前、食品メーカーでWeb関係の部署に在籍していたとき、コラム作成やバナー作成などのディレクションをしていたんです。そのときに『Photoshop(フォトショップ ※)』をはじめとしたツールのスキルが身につきました。クリエイティブに関する業務が、今のInstagramの投稿に役立っています」

※Photoshop(フォトショップ)……Adobe(アドビ)が販売している、ビットマップ画像編集アプリケーションソフトウェア。写真のレタッチや合成、テキストの追加や装飾ができる

『Photoshop』を最大限に使っておいしそうに編集しているのか……と思いきや、「でも、Instagramの投稿には『Photoshop』は使用していないですよ」と続けるpata.さん。リアルを追求するpata.さんのこだわりが浮き彫りになってきます。

文字の印象や、添えられたコメントにパン愛を感じる

「大胆な加工はしていないんです。目の前のパンが充分においしそうなので、そのまま素直に表現できれば、おいしさは伝わるかな、って。

加工よりも、撮影機材に気を配っています。使っているのは、SONYの一眼カメラ。これで写し出されたリアルな姿をそのままに、ライトをはじめとする機材を駆使して、パンの質感や明暗を出しています。夫が写真好きなので、ちょうど本格的な機材がそろっていて。

文字はフォントを打ち込むのではなく、私自身の手書きです。文字を書くときはiPadを使っていますね。」

画面越しでも、食感や香りまで伝わってきそう

【撮影方法】

クリエイター

おいしいパンを求めて全国各地に足を運び、パン屋をめぐること300軒以上。年間350日パンを食べる。Instagramでパン情報や、パンアレンジを発信中。美しいパンの写真に、手書き文字を添えた画像はアート作品のよう。月に一度「パン好きのための間借り朝ごぱん」を開催している。

食や美容など、暮らしにまつわるコラムを通じて、なにかをはじめたくなるヒントを提案。出会ったパンとコーヒーをNotionに記録しnoteで発信。週末のパン屋、カフェめぐりが愛しの時間。思いを言葉に、だれかの背中をそっと押す文章をつづる。

SNSでシェアする

いま注目のテーマ