
兵庫県神戸市を拠点に、植物療法士として活動する薬剤師の宇鷹画美(うたか えみ)さん。薬の販売や治験など、薬剤師としての経験を積むなかで、体調不良をきっかけに植物療法の世界に足を踏み入れました。植物療法への思いや、薬剤師としてのキャリアについて伺います。
目次
植物療法の世界
はじめに、みなさんは「植物療法(フィトテラピー)」とは何かご存じでしょうか。“療法”と聞くと、何だかむずかしく感じるかもしれませんが、身近なところで言えば、たとえばハーブティー。ハーブティーを飲むことも、植物療法の一つです。ハーブが持つ力で自律神経を整え、免疫力を高めることができるといわれています。


このように「植物療法」とは、植物の力を利用して人の自然治癒力を向上させ、病気やケガの治癒を促したり、病気の予防に役立てたりする伝承療法です。ハーブのほかにも、精油(※1)やフラワーエッセンス(※2)など、植物療法にはさまざまな種類があります。
※1 精油……植物から採れる芳香成分。エッセンシャルオイルとも呼ばれる
※2 フラワーエッセンス……イギリス人の医師、エドワード・バッチ氏が考案。主成分は水で、花や植物のエネルギーを含むエッセンス
植物療法が浸透しているフランスやイギリスなどヨーロッパの国々では、「植物療法士」は国家資格とされています。日本には国家資格はありませんが、民間資格があります。

植物療法のきっかけ
現在、オーガニックの食材店で働きながら、植物療法士として各地でさまざまなワークショップを主宰する宇鷹画美さん。植物採取などのフィールドワークを取り入れながら、野草や薬草に寄り添うような活動を行っています。宇鷹さんが植物療法に興味を持ったきっかけは何だったのでしょうか。

「植物療法は昔から興味のある分野ではあったんですが、本格的に学ぼうと思ったのは、自分自身の体調不良がきっかけです。というのも、30代前半にフランスでのワーホリ(※)を終えて帰国したら、全身アトピーになっちゃって」
※ワーホリ……ワーキングホリデーの略。一定期間、海外で就労しながら滞在できる制度
「フランスでの生活が自分にはとてもよく合っていて、日本での生活が息苦しく感じるようになってしまったんです。それが全部、肌に現れてしまったようで……。荒れるし、ただれるし、顔もパンパンになって、もともと肌が弱かったというのもあるんですが、ひどいときは外に一歩も出られないような状態でした。
そのときに、皮膚科でもらった塗り薬と並行して、自分で植物療法や食事療法を取り入れてみたんです。そしたら、症状がふーっと引く瞬間があって。それはなにで体感したのかというと、私の場合は“フラワーエッセンス”でした。よさを実感できたからこそ、その“理屈”を知りたくなって、植物療法を学ぼうとスクールへ通い始めました」

岡山から東京まで通った3ヶ月間
当時は岡山に住んでいた宇鷹画美さん。「もうね…『知りたい!』と思って(笑)」と、東京まで週1回、3カ月間、植物療法の第一人者である森田敦子さんが主宰する『ルボア フィトテラピースクール』に通うことに。40代目前で始めた学びには、新たな知識との出会いがありました。

「スクールでは植物療法の基礎はもちろんですが、“女性性”についての学びもかなり多かったです。妊娠や出産、不妊など、女性の体で起こることに対して、植物でどういうアプローチができるのか、どういう選択ができるのかについても学んでいきました。
私が通っていたときは、オンライン講座もまだなくて、カリキュラムも今ほどは確立していなかったように思います。だけど、とにかく、森田敦子先生が体験されたお話は興味深いものでした。
植物療法というと、人によってはスピリチュアルなイメージを持つかたもいると思うのですが、私は全然スピリチュアルじゃない、むしろ科学的なものを学ばせていただきました」
宇鷹画美さんは卒業後、ルボアの公式サイトで植物療法についてのコラムを寄稿。さらにスクールが運営するショップで植物蒸留会を開催するなど、少しずつ、でも着実に活動の場を広げていきます。

植物療法士の魅力とは?
クリエイター
幼少期から漢方や生薬などに興味があり、薬学の道へ。大学卒業後は外資系の製薬会社でMRとして働いたのち、漢方薬局に勤務。自身の体調不良をきっかけに、本格的に植物療法を学び、植物療法士の肩書を持つ。2025年現在は兵庫県神戸を拠点に、東京や福岡でもワークショップを主宰。
フリーライター。大阪在住。大学卒業後、株式会社オレンジページでアルバイトとして現場や料理を学んだのち、兵庫県・神戸の帽子ブランド「mature ha.」に就職。退職・出産を経て、ライターとして活動開始。好きか嫌いかはひとまず置いといて、とりあえずやってみるタイプ。今日も夕飯の献立を考えながら暮らしている。