書籍や雑誌、広告などで幅広く活躍中の料理家・堤人美(つつみ ひとみ)さん。1年で10冊ものレシピ本を出版することもあり、料理業界では「和中華」「作りおき」「煮込み」などのイメージがありました。そんな堤さんが、韓国ドラマ好きという情報がじわりじわりと広がり、2023年3月、ついに韓国ドラマと食に関する書籍を出版。その経緯とともに、堤さん流の感性の磨き方、気持ちの変化などを伺いました。
目次
- 知れば知るほどおもしろい、ドラマの中での料理の役割
- 韓国ドラマを通して、自分の世界が何倍にも広がった
知れば知るほどおもしろい、ドラマの中での料理の役割
ストーリーがおもしろく、出てくる料理に意味がある作品を紹介
最近、料理家の堤人美さんは、同じく料理家のワタナベマキさんとの共著『韓国ドラマの妄想ごはんレシピ帖』(主婦と生活社)を出版しました。ふたりが好きな韓国ドラマについて語り合い、そこに出てくる料理シーンについて考察し「こんなおかずを作って食べているのではないか」と妄想して、レシピを紹介しているという一冊です。
それまでの堤さんは、家庭料理をおいしくするコツを詰め込んだ書籍を中心に出版してきました。なぜ、韓国ドラマに関する本を出すことになったのでしょうか。
→『韓国ドラマの妄想ごはんレシピ帖』(主婦と生活社/ワタナベマキ共著)
「当初の依頼は、“韓国料理のレシピ本”のお話だったんです。でも、そこまで韓国料理について詳しく勉強できていない状態で。とはいえ、興味があるし、やってみたい。どんな形なら私らしく発信できるか考えて、韓国ドラマにからめるならできるかもしれない、と編集者さんにお伝えしたんです。もしそれができるなら、韓国ドラマ好きとしてよく話をしているワタナベマキさんといっしょにやりたい、と」
韓国ドラマが好きで、たくさんの作品を観つづけている堤人美さんだからこその提案でした。その企画が無事に通ってからは、ワタナベマキさんと一緒に、どんなドラマを取り上げるかという相談から始まり、どのシーンのどの料理か、それをどうレシピ化するか話していったといいます。
「まず、自分たちが心から観てほしいとおすすめできるドラマであること。さらに、料理がおいしそうで、出てくるシーンにきちんと意味があること。それらを考えて何度もやりとりしていきました」
おいしそうな料理が出てくるドラマでも、ストーリーとして魅力がなければ取り上げない。逆にストーリーがよくても、料理がシーン内で役目を果たしてなければ意味がない。そう考えて、今まで観てきたドラマを再点検していったというわけです。
ドラマの料理にどんな意味があって、何を伝えているのか
料理がドラマ内での役目を果たしているというのは、どういうことなのでしょうか。
「たとえば『賢い医師生活』(制作:tvN)というドラマでは、時間の経過を兄と妹が食べる食事で表現しています。夏の定番麺である、豆乳を使ったコングクスを食べるシーンから、年末年始に食べる餅料理・トックを映すことで、あー、そんなに時間が経ったんだな、とわかるんです。
クリエイター
出版社勤務、料理研究家のアシスタントを経て独立。特別な材料を使わず、身近な素材や調味料の組み合わせの妙で、作りやすくおしゃれなレシピに定評がある。書籍や雑誌、広告などで幅広く活躍中。大の韓国ドラマ好きが高じて、2023年には『韓国ドラマの妄想ごはんレシピ帖』(主婦と生活社/ワタナベ マキ共著)を出版し、新たな活躍の場を広げている。
フリーライター。出版社オレンジページに入社し、生活情報誌『オレンジページ』『オレンジページ インテリア』の編集を担当したのち、フリーランスに。暮らしやインテリア、カルチャーを中心に、雑誌や書籍、WEBで執筆・編集を行う。