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筋トレも料理もストイック。だれウマさんの料理動画の表現力

筋トレも料理もストイック。だれウマさんの料理動画の表現力

だれウマ, 晴山 香織

料理研究家のだれウマさんは、2024年5月現在、YouTubeのチャンネル登録者数は約143万人、TikTokはフォロワー約50万人、Xは約29万人と大人気。圧倒的なフォロワー数を誇り、さらに、著書『宇宙一ずぼら絶品めし』(KADOKAWA)が、第9回料理レシピ本大賞入賞という人気ぶり。だれウマさんが料理をどのように考えて発信し、どんな道を歩んできたのかをお聞きしました。

目次

  • 競泳人生に挫折し、料理の道へ
  • 動画はサムネイルが命。「おいしそう」を大切に。
  • 「バズる」までの継続と、バズってからの努力
  • ブラさずにいたこと、支えにしたこと

競泳人生に挫折し、料理の道へ

「自分の力でやりたい」という気持ちを糧に

「作っていきマッチョ」と料理を作り、「いただきマッチョ」と仕上がったものをおいしそうにほお張る。半袖からムキムキの二の腕をのぞかせながら、画面に映っているのは、筋トレ好きの料理研究家・だれウマさんです。

料理研究家のだれウマさん
料理研究家のだれウマさん。おいしそうな料理にはもちろん、鍛え上げられた筋肉にも目を奪われます

だれウマさんが動画の配信を始めたのは、大学生のころ。なぜ、料理をテーマにしようと思ったのでしょうか?

「僕、じつは3歳から高校生まで水泳をやっていて、オリンピックの強化選手候補になるくらい打ち込んでいたんです。毎日10km泳ぐ日々を送っていたのが、ある日、少しずつタイムが伸びなくなってしまって。ずっとトップではいられない、という盛者必衰の現実を目の当たりにして、大学では水泳をやめることに。

すべてが順調だったはずなのに、急に夢も目標もなくなってしまった。そのときに思ったのが、『まだまだ自分の力で何かやりたい!』ということでした。すっごく負けず嫌いな性分なんですよね(笑)。そこで、水泳以外の特技ってなんだろうかと考えてみたら、料理だったんです」

水泳の県大会では“いつもトップで敵なし”というほどの実力だった少年が、人生で初めての挫折を味わったあとに見つけたのが、料理だったのです。

大学に入学してから、アルバイトでいろいろな仕事を経験したものの、それまでの水泳のような手応えを感じられなかったこと。サークルに入っても充実感を得られる時間がなかったこと。さらに、大学で学んだSNSマーケティングに興味が湧いたことも重なって、自分で発信してみようと思いついたと話します。

「幼いころから、祖母や母に教わって料理をしていて得意でした。祖母はなんでも手作りする人で、誕生日に食べるピザも生地から作ってくれたし、よもぎを摘んできて、よもぎもちを作ったり。

自然と自分でも料理するようになると、食べてくれた両親や兄が喜んでくれるのがうれしくて。喜ばせたくてまた作るうちに、料理が得意になっていたんだと思います。

僕、自分が作るから揚げが大好きなんですよ。まずはそのおいしさを伝えたい、みんなに作ってほしいという思いがあってブログを書き始めました。最初は動画ではなかったんです」

ころもがザクザクなから揚げ
だれウマさんが特に自信あるという、から揚げ。複数あるから揚げレシピのなかでも、こちらはころもを驚くほどザックザクに仕上げた「塩麴から揚げ」

それまで大学の授業でしか使ったことなかったパソコンを開き、まずはブログの作り方、サイトの開設から勉強。元来のストイックな性格が幸いし、とことんまで調べながらやりたいことに向き合う時間は、手応えを感じられるものだったと振り返ります。

反応は皆無でも、負けたくないという一心で続けたブログ

プログラミングはインターネットを活用して知識を得て、アルバイトから帰ってきたらすぐにパソコンに張りついて勉強しながら、無事にブログを開設。念願だった料理のことを綴り始めます。しかし。

「書いても書いても、反応なし。無風でした(笑)。それでも、自分でやろうと決めたことだし、こういう状況で続けられる人って数%だろうから、そこに入ってやろうって思って。負けるか!っていう、ど根性でした」

現在のだれウマさんのブログのトップ画面
現在のだれウマさんのブログのトップ画面。いまや多くの人が閲覧しています

そこからは、ひたすら目に留まるための施策を考えていったといいます。ただの料理ブログでは目立たないからと、「学生」「筋肉」をキーワードにして書き続け、さらにわかりやすさを追求していくうちに思いついたのが、動画でした。

「ちょうど大学の春休みで時間もあったので、もっとレシピをわかりやすく伝えるためには動画を撮るしかない、と。YouTuberになるつもりはなくて、あくまでもブログに埋め込むために始めたのが動画。とはいえ、マーケティングを勉強していて“他者との差別化”は大事だと身にしみていたので、動画でも『筋肉+料理』を打ち出すように意識しました」

筋トレのための料理や、やせやすい栄養素を考慮したレシピなどを紹介する動画を制作。ブログのためではあったものの、その「筋肉+料理」方向性が珍しかったせいか、YouTubeに投稿を始めてから半年で、チャンネル登録者数が400人ほどに達したといいます。

だれウマさんのYouTubeチャンネル
だれウマさんのYouTubeチャンネル。現在はこちらをメインにしつつ、サブチャンネルとして「痩せウマ」チャンネルも開設

「でも、始めは再生回数はそれほど多くなかったんですよ。毎日5回とか10回とか。ゼロって日もありましたから。甘い世界ではないとわかっていたので、とにかく続けるしかないと踏ん張りました。稼げるようになるまで負けるものか、と。大学生で時間があったのもよかったんだと思います。ひたすらレシピをブログに書いて、動画を撮ってアップする、ということに熱中して、それをずっと繰り返していました」

50円の収益の重みを感じながら

もちろん、レシピを書き、動画をアップすることだけではなく、ブログの収益化にも挑んでいました。「Googleアドセンス」を活用し、広告収入を得ようと考えていたのだそう。これは、Googleが提供する広告を掲載すると、クリック数に応じた収入を得られるというものです。

「この広告を掲載できるサイトになれるかどうかの審査が厳しくて。20回くらい落ちましたよ。その度にどこがダメだったのか自分で考えて、内容を精査して書き直して……。

当時は“Googleエキスパート”という専門のかたがいて、アドバイスをもらえる仕組みがあったんです。そこで相談しながら何度もチャレンジして、やっと広告を貼れるように。初めて誰かが広告をクリックしてくれて、振り込まれた金額は50円。たった50円だけど、どこの企業にも属さず、自分の手で稼げたことが本当にうれしくて。人生でトップクラスに入るくらいのうれしいことでした」

その50円の重みは今でも忘れられないと、しみじみと話します。料理研究家を名乗り始めてから、初めて得た収入。それまで収益もなく、ひたすら続けてきたことが報われた瞬間でもありました。

動画はサムネイルが命。「おいしそう」を大切に。

レシピ開発ではサムネイルを意識

もちろん、ただ続けるだけではフォロワー数の獲得にはつながりません。大切なのは、おいしそう、作りたいと思わせるレシピかどうか、ということ。だれウマさんは、どのように考えていったのでしょうか。

クリエイター

筋トレ好きの料理研究家、ダイエット料理研究家。「だれでも上手く、そして美味く」をコンセプトに料理を発信。YouTubeのチャンネル登録者数は140万人以上を誇る(2024年現在)。オンライン料理教室『だれウマ部』では、200人以上の生徒が参加。バラエティ、情報番組出演も多く人気が高い。

フリーライター。出版社オレンジページに入社し、生活情報誌『オレンジページ』『オレンジページ インテリア』の編集を担当したのち、フリーランスに。暮らしやインテリア、カルチャーを中心に、雑誌や書籍、WEBで執筆・編集を行う。

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