“学生料理家”の暖(のん)さんは、管理栄養士を目指している大学4年生(2024年6月現在)。Instagramでは、お弁当やおうちごはんのレシピを投稿し、フォロワーは約9.9万人。これが編集者の目にとまり、2022年に著書を出版。いまやタイアップや講師業も舞い込む、スーパー大学生なのです! でも、お話してみると、お名前の通りとてもあたたかな雰囲気の、普通の女子大生。作ることと食べることが大好き、そして大好きなことに全力で向き合う様子が伝わってきました。
目次
- 高校時代のダイエットをきかっけに、料理に目覚める
- お弁当とおうちごはんを中心に、レシピを発信
- 学生料理家として活動の幅が広がる
- 暖さん流・お弁当の心得
- 社会人になっても、発信は続けたい!
高校時代のダイエットをきかっけに、料理に目覚める
暖(のん)さんが料理に目覚めたのは高校時代。ダイエットのために、自分でお弁当作りを始めたことがきっかけでした。意外にも、それまでは食や料理にあまり興味がなかったのだそう。
「小さいころからお母さんのお手伝いをしていたということもなく、料理の経験はまったくなかったんです」
間違った食事制限の苦い経験から、管理栄養士が目標に
「やせたい」と決心して、自分のためにダイエット弁当を作り始めたものの、そのころは栄養学の知識もなく、「食べなければやせる」「食べるなら低カロリーのものだけ」という間違った食事制限を自己流で続けていました。
「ネットで〈ヘルシー〉〈おかず〉で検索して、出てきたものを片っぱしから作っていました。当時のお弁当の写真も残っていますが、こんにゃくとか麦ご飯とかばかりで……。ごはんの量もきっちり決めて、グラム数を量って詰めていましたね」
そんなダイエットを半年ほど続けると、体調に異変を感じ始めました。体力がなくなり、家からそう遠くない学校まで自転車で通学するだけでもクタクタに……。貧血もあったといいます。
「自分でも体調を崩していることはわかるし、これではダメだなと思ってはいたのですが、ダイエットをやめられないんです。体重の数値は目に見えて落ちていたので、ちょっとでも食生活を元に戻したら、また増えるんじゃないかという思いに縛られて、執着してしまって。どこでやめればいいか、わからなくなっていました」
ようやくやめられたのは、「体調が心配。食生活を戻していったほうがいいよ」とお母様のストップがかかってから。そこから栄養バランスのとれた健康的な食事を作ることにシフトチェンジしました。
この苦いダイエット経験を通じて、暖さんは料理を作ることが好きになり、家族の分までお弁当を作るようなっていました。別のものを作るのは大変なので、内容は暖さんと同じダイエットメニュー。さすがに量は増やして詰めていましたが……
「家族みんな、スリムになってしまって! 父は健康診断でいい結果が出たってよろこんでいました(笑)。それで、これからは家族にも本当の意味で“健康的な食事”を作っていきたいと思うようになったんです」
食そのものに興味が沸き、「管理栄養士の道に進もう」という新しい目標もできました。そのために大学に進学することを決めました。
コロナの自粛期間にInstagramをスタート
暖さんが高校3年生になるころ、新型コロナウイルスの感染が拡大し、世の中が自粛期間に入りました。ほとんど学校に行けず、毎日家で過ごす日々。そのときに今のInstagramの軸ができたといいます。
「1日3食、たまにおやつも作って料理三昧。それを毎日撮影していました。自分で〈映え〉を意識して投稿しはじめたのも、そのころです」
Instagramで投稿するにあたり、アドバイスをくれたのは、なんとお母様でした。暖さんのお母様は、DIYクリエイターとして活躍するchikoさん。SNSでDIYのアイデアを発信し、Instagram(@wagonworks)のフォロワーは15万人以上(2024年6月現在)。著書も出版し、雑誌やWEB、テレビにも多数出演されています。
「私が小学生のころから、母はブログやSNSで活動していて、家のものはなんでも作っちゃうんです。家で毎日写真を撮って、発信する姿を小さいころから見てきたので、それをめずらしいことだとは思っていませんでした」
Instagramに投稿する写真を一眼レフカメラで撮るようになったのも、お母様の影響です。
「私が本格的にレシピを発信していきたいと言ったときに、『一眼レフで撮ってみたら?』とアドバイスをもらいました。母はカメラのプロではないけれど、使い慣れているので、いろいろ教えてもらいながら撮影をはじめました。背景や天板も、母がDIYで作ったものを使わせてもらっています」
暖さん自身が登場する写真はお母様が撮影しています。ときには、お母様のアカウントに登場することもあるとか。母娘で協力しながら、SNS発信を楽しんでいる様子、いい親子関係が伝わってきます。
家族のために作るよろこび、料理の楽しさを知る
「自分のお弁当を作るためだけに早起きするのはもったいないので、父と弟の分も作るようになりましたが、作るとよろこんでくれるのがうれしくて。ときどきですが、感想をLINEでもらえることもあります。『おいしい、おいしい』って言ってもらえると、人のために作るのって幸せだなぁと思うんです」
そう話す暖さんがこだわるのは、曲げわっぱの弁当箱。ぬくもりのある見た目はもちろん、保湿効果があるため、ご飯のおいしさをキープしてくれるところがお気に入り。ですが、扱いがむずかしいのが玉に瑕(きず)。天然の木製なので、水につけっぱなしにしておくと腐ってしまうのだとか。そのため、帰ったらすぐに洗って自然乾燥するように、管理は徹底しています。
「父にも、『できれば、会社で洗って干しておいてほしい』とお願いしていて。手間をかけさせていますが、ちゃんとやってくれているので、ありがたいです」
いつしかお弁当だけでなく、家族の夕食も暖さんが腕をふるうようになっていました。まだ学業に余裕があった大学1、2年のころは、授業の合間の空き時間にいったん帰宅して1品でも夕食の準備をし、また大学に戻るという日もあったそう。
「それまでは料理をまったくしてこなかったからか、面倒くさいという気持ちよりも、好奇心のほうが勝っていたんだと思います。ネットでいろいろ調べると、『こんなものも作れるんだ!』というのが楽しくて。全部をレシピ通りに作るというよりは、『この食材とこの調味料の組み合わせはアリなんだ』という発見をヒントにして、いろいろな料理にチャレンジしました」
数をこなすうちに、「あんなものも、こんなものも作ってみたい」と料理への興味はますます膨らんでいきました。
お弁当とおうちごはんを中心に、レシピを発信
2024年6月現在、暖さんのInstagramのフォロワーは約9.9万人。フィード投稿の画像に縦書きの文字を入れ、レシピを載せるようにしてから、フォロワーもコメントも増えたといいます。
投稿の見せ方をブラッシュアップ
クリエイター
管理栄養士を目指す大学4年生(2024年現在)。高校生のころからお弁当作りをはじめ、現在も家族の食事とお弁当作りを続ける。独自のセンスが光るお弁当のおかずや手作りスイーツのレシピをSNSで発信。著書に『弁当作家の学生が毎日作る 家族と自分のゆる弁』(主婦と生活社)。
出版社勤務(飲食業界専門誌、育児誌、料理誌、女性誌など)を経て、フリーランスの編集者・ライターに。食や生活まわりのテーマを中心に、雑誌・書籍・WEBなどで執筆。人物インタビュー、市井の人への取材も大好き。お茶する時空間をこよなく愛する。