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【就労継続支援A型】のオーガニックカフェで個性を輝かせる経営を

【就労継続支援A型】のオーガニックカフェで個性を輝かせる経営を

若林 紋子, 川越 光笑

東京・西八王子駅から徒歩2~3分。2024年2月にオープンしてから1年が経ったオーガニックカフェ『オレオール☆』。「就労継続支援A型」として運営しているお店です。オーナーの若林紋子(あやこ)さんは、30代で看護師免許を取得し、医療現場や福祉の仕事などを経たのち、ご主人と仲間たちで現在のカフェ『オレオール☆』を経営。その道のりや「就労継続支援A型」としてのビジネス展開のあり方などを伺いました。

目次

  • 「就労継続支援A型」とは
  • カフェ経営を選んだきっかけ
  • 専業主婦から看護師の道へ
  • 家族としての目線を持つ
  • 作業の「見える化」
  • 個性を輝かせるコツ

就労継続支援A型とは

「就労継続支援」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。「就労継続支援」とは、一般就労がむずかしい障害のあるかたがたをサポートしながら、働く場を提供する福祉施設のこと。A型とB型があり、大きな違いは「雇用契約の有無」です。A型は、個人と雇用契約を結ぶため、定期的な就労時間が必要になる代わりに最低賃金が保証されます。

カフェ『オレオール☆』は、当初より「就労継続支援A型」に特化。同じく雇用契約を視野に入れている事業所からも注目が集まっています。

お客様への理解を促す注意書きが随所に置かれ、思いやりを感じる
『オレオール☆』の店内。飲食スペースだけでなく、オーガニック食材や利用者が生み出したグッズも販売

カフェ経営を選んだきっかけ

カフェ『オレオール☆』のオーナーである若林紋子さん(以下、紋子さん)は、「就労継続支援A型」の経営はお金を生み出す仕組みがむずかしいと話します。

「『就労継続支援A型』は、会社で出した利益から利用者さん(就労継続支援A型で働く人)にお給料を支払わなければいけないため、経営者としては大変です。ですが、きちんとした時給分を支払ってあげたいという気持ちからA型にこだわっています」

オーガニックカフェ『オレオール☆』オーナー・若林紋子さん

当初は、カフェという業態ではなく、いまの店舗を作業場として検討していたそう。

「『就労継続支援A型』として、パンなどの販売をしながら、ITの仕事を中心にした作業場にしたかった。『オレオール☆』の考え方を理解してくださるファンを増やし、委託販売みたいなことができればと、と考えていました」

と紋子さん。その後、想定外の出来事が重なったとか。

「一回、全部リセットになってしまったのです。人事面などで我慢していたことがあり、それが影響して計画が進まなくなってしまって……。困っていたときに、私が看護師として病院で働いたときからの友人たちが、メンバーとして加わってくれることになりました」

店のサポーターには、保育士やカウンセラー、オーガニックレストランなどを経営していた友人たちが参加してくれるようになったといいます。

「その仲間たちとは、昔いっしょに店舗を借りていました。メインで活動していた友人の一人が、オーガニック系の料理を作る人。共同経営という形でお金を出しつつ、食事会や健康セミナー、イベントなどを開催していて、そのときの気心の知れた仲間たちが集結しました。

いまは、とてもスムーズに事が進んでいます。やはり、自分の気持ちを大切にしていかないと、会社もうまくいかないということがよくわかりましたね」

それぞれの仲間のタイミングと、『オレオール☆』の再スタートが重なったこともよい展開に。関わってくれているスタッフは、そのときの仲間をはじめ、「就労継続支援A型」の取り組みに賛同してくれたメンバーで構成。『オレオール☆』の理念に共感したファンたちで再スタートを切ることができたそうです。

いまの『オレオール☆』の人気メニュー「米粉のシフォンケーキ」。農薬不使用の米粉を使用したグルテンフリーのスイーツは、ギルドフリーも魅力

『オレオール☆』の経営において、「就労継続支援A型」に着目した大前提としての理由があったと紋子さんは話します。

「一般社会でよく使われる『障害者』という言葉ですが、これは勝手に人間が決めた区分です。障害とは、そもそも人間の線引きで決めていることですよね。私たちは同じ人であり、勝手に他者が偏った認識で扱うのは違うと考えています。

働きたいと思っていても、希望通り働けないのは社会の問題です。その人たちは、ただ精神的に不安定になってしまっているだけの場合が多く、原因は食の乱れであることも。いまのような食生活をしていたら、女性は子どもを産むことだってむずかしい。そんな未来がみえてきています。

すでに警鐘を鳴らしているときではない。自分たちでやるしかないという思いがありました」

専業主婦から看護師の道へ

『オレオール☆』では、オーガニック食材をはじめ、水や塩など口に入るものに対して、徹底したこだわりを持っています。紋子さんがその考え方に至った経緯には、医療現場での経験があったから。

コーヒーももちろんオーガニックを提供。有機コーヒー豆を自家焙煎した本格派コーヒー

クリエイター

専業主婦を経て30代で看護師になる。実父の看病や看護師としての経験を通して、「医食同源」の大切さを感じる。福祉を学んだのち、就労継続支援A型のオーガニックカフェ『オレオール☆』を運営。「ひとの人生(みち)を照らし輝きを」テーマに、ご主人と共に「誰もが働ける社会」を目指す。

「ヒトは食べたもので体がつくられる」をモットーに“食と健康”をライフワークとする。日本の食文化に関心が高く、著書に『おにぎり~47都道府県のおにぎりと、米文化のはなし~』(グラフィック社刊)がある。管理栄養士としての執筆活動にも力を注いでいる。

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