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焼き菓子とジェラート専門店『mUni』はなぜ人気? 染谷悠太さん

焼き菓子とジェラート専門店『mUni』はなぜ人気? 染谷悠太さん

染谷 悠太, 田中 祐子

パティシエ・染谷悠太さんが2025年7月、東京・西荻窪に開いたお店『mUni(ムニ)』。おいしい焼き菓子とジェラートが評判をよび、オープンからあっという間に話題沸騰の人気店に! 染谷さんのヒストリーとともに『mUni』誕生の裏側に迫ります。

『mUni』店内
『mUni』店内

目次

野球少年からパティシエへ。染谷さんの唯一無二の歩み

焼き菓子とジェラート専門店「mUni(ムニ)」のオーナーパティシエの染谷悠太さんは、めずらしい経歴の持ち主。

染谷悠太さん
『mUni(ムニ)』のオーナーパティシエの染谷悠太さん

「野球以外は何も考えていなかった」というほど小学校から大学まで野球に捧げ、大学では体育会系硬式野球部に所属。しかし、就職活動で初めて「野球のない自分」を考えなくてはならない現実に直面します。自己分析を繰り返すなかで見えてきたのが「食べることが好き」「人が喜ぶ顔を見るのが好き」という、自分の根っこの部分でした。

青春時代の一枚
野球一色の青春時代

野球からは大きく離れて、大手酒類・食品卸会社に就職を決めます。会社員として2年間を夢中で過ごすかたわら、自分の中で次第に大きくなっていく「自分が手がけた商品で直接、人を笑顔にしたい」という想いに気づいた染谷さん。

食べ物の中でも、とりわけ甘いものを食べたときに人に与えられる「プラスの感情」は、ほかにはないものだと直感し、つきうごかされるように製菓専門学校の門を叩きます。そのとき25歳でした。

会社員時代
社会人のイロハを学んだ会社勤め

野球人生と会社員生活を経た、製菓初心者の染谷さん。一方、有名店を知り尽くし、小さいころからお菓子作りをしてきた18歳の同級生たち。そんな同級生に囲まれながら、染谷さんは製菓を学んでいきます。

ナッペ(※)などの技能テストに何度も落ち、自らの手先の不器用さとも向き合う日々。人生初のショートケーキは、「思い出したくない出来」だったそう。それでも「できないことが恥ずかしいのではなく、続けるのをやめることのほうが怖い」という信念のもと、貴重な休日も、貯金も、関東近県のパティスリーめぐりに費やし、技術も舌も磨き続けました。

※ナッペ……フランス語で「広く平らに覆う」という意味の製菓用語で、ケーキの側面に生クリームやチョコレートなどを均一に塗る作業のこと。デコレーションケーキ作りの基本技術

そんななかで出会ったのが、千葉県にあるフランス菓子店『レタンプリュス』。

「野球部っぽい、いい意味での体育会系の空気」を感じ、「ここでしごかれたい!」と思ったというのが、体育会系の染谷さんらしさ。不器用だからこそ、きちんと叱ってもらえる環境を修行先として選びたかったのです。

卒業後は、希望どおり『レタンプリュス』に就職。製菓の道を目指したときから、目標にしていた大好きなフランス菓子の世界。染谷さんは毎日のように叱られながらも、生地作りや焼き込みなど、フランス菓子の基礎を徹底的に叩き込まれました。

レタンプリュス修行時代の染谷さん
レタンプリュス修行時代の染谷さん(左)

そしてさらに、専門学生のころから続けていたパティスリーめぐりで出会ったのが、京都の焼き菓子・ジェラート専門店『SUGiTORA(スギトラ)』です。

『SUGiTORA』で働く染谷さん
『SUGiTORA』でさらに研鑽(けんさん)を積む

「『SUGiTORA』で初めて食べた、タルトタタンのパフェは忘れられません。グラニースミスという品種のりんごの酸味と、ほのかな苦味、下に重ねられた洋梨のジェラートのフレッシュさ。持ち帰り前提の商品とは違う、〈その瞬間のおいしさ〉に心をつかまれました」
と染谷さん。

ちょうどそのころ、自分の「志」とのギャップを抱えていた染谷さんは、タルトタタンのパフェに感動した思いを胸に、『SUGiTORA』に修行の場を移します。高級ホテル勤務などを経た『SUGiTORA』の杉田シェフのもとで、「えりすぐりの材料のリッチな使い方」や「瞬間を味わうデザートの魅せ方」など、新たな視点の数々を学びます。

順調に修行を進めながら、店のInstagramや、運営の仕方を学んだりと、一部を任されたりするまでに。じつは、『SUGiTORA』の面接時に、杉田シェフから「独立は“いつか”じゃあかん、3年後や」という言葉をかけられていたのです。

染谷さんのぼんやりとしていた独立の夢に、シェフの言葉ではっきりと与えられた期限。静かに時を重ね、そして満ちて形になっていきます。独立のときが訪れます。

『mUni』のブランディング戦略と、西荻窪を選んだワケ

クリエイター

焼き菓子とジェラート専門店「mUni」オーナーパティシエ。第64回 西日本洋菓子コンテスト ブーシェ・シュクレ部門(焼き菓子)優良賞、2024年ジャパンケーキショー東京 ギフト菓子部門銀賞受賞。「心の温度と口角を上げるお菓子」をコンセプトに、焼き菓子とジェラートの唯一無二の店づくりに取り組んでいる。

出版社やwebメディアでの編集経験を経て独立。ビジネス、人文、料理、インテリア、家事、旅行、医療など幅広いジャンルの編集・執筆を行なっている。

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