生成AIにレシピを相談することで、料理はどんなふうに広がるのでしょうか。OPCフードクリエイターの呼びかけで行ったレシピコンテストには、AIとの対話から生まれた16作品が集まりました。完成した料理だけでなく、問いかけ方、試作での判断、未来の食卓へのまなざしまで含めて審査し、優秀賞・入選・奨励賞を選出しました。
AIと一緒に考えたからこそ見えてきたもの
今回の目的は、すてきな料理を実現することだけではありません。AIからどんな提案を引き出したのか。その提案を、作り手がどう受け止め、どこを試し、どこを直したのか。そこに、それぞれの作品の面白さがありました。
たとえば、AIを調理上の課題を解く相手として使った作品。自分の専門性や経験を、AIの言葉によって別の料理表現へ広げた作品。未来の家庭料理を、空想だけでなく日々の食卓につながる形で考えた作品。どの応募作にも、AI時代の料理づくりのヒントがあります。
優秀賞 AIとの向き合い方が光る3作品
AIとの共創による未利用部位の再価値化 – 夏の二皿(アーロン・ササキさん)

作品について
アーロン・ササキさんは、未利用になりがちな鰤のアラを家庭料理の中で再発見したいと考え、「夏にしっかり食べられる満足感」「季節感」「家庭で再現できること」を先にAIへ共有。主菜とスープを別々に考えるのではなく、献立としてどう成り立たせるかを相談しながら、候補の比較、使わない素材の判断、工程の現実性まで一つずつ検証していきました。
評価コメント
AIの提案をそのまま採用するのではなく、不採用にした案の理由まで検討している点が印象的でした。課題設定、AIへの問いかけ、試作、料理としての仕上がりのバランスがよく、AI共創のプロセスそのものを伝えられる総合力の高い作品です。
AI満腹設計!4重食感のオートミールライスボウル(ふしゆかさん)

作品について
ふしゆかさんは、「満腹感」を量ではなく、食感、うま味、香り、彩りの組み合わせで生み出せないかをAIと設計。最初からコンテストの条件や使いたい食材、使わない食材まで細かく伝え、AIの提案をもとに試作を重ねました。試作後には味の薄さ、トマトの崩れ、オートミールのべたつきなどをAIへ戻し、改善サイクルを回しています。
評価コメント
AIをレシピ名や食材の提案だけに使わず、食べたときの体感を設計する相手として活用している点を評価しました。試作を通じて調整した跡もあり、健康感とおいしさ、日常的な作りやすさがうまくまとまっています。
ほどいて完成。まるごとポテトコロッケ(原みのりさん)

作品について
原みのりさんは、家庭料理の定番であるコロッケを、食品ロス削減だけでなく食べる楽しさまで含めて進化させたいと考えました。ChatGPTには、家庭で作れること、特別な材料や道具を使わないこと、食品ロス削減につながること、食べる楽しさがあることを条件として提示。「捨てる」を「役割」に変えるという考え方から、じゃがいもの皮や玉ねぎの皮の使い方、盛りつけ、食べ方の演出まで相談しています。
評価コメント
完成形だけでなく、食べ方そのものを設計しているところが楽しい作品です。皮をチップスやソースとして生かし、「ほどく、香る、割る、絡める」という体験へつなげた点も印象的。一つの課題を、食品ロス、食感、盛りつけ、体験性へと展開しており、AIとのやりとりから発想が増幅していく面白さが伝わります。
入選 それぞれの個性が広がる7作品
夏香る 塩麹チキンとキウイのハーブちらし(沢田 桂さん)

作品について
沢田 桂さんは、自身の得意分野である発酵を出発点に、塩麹チキンを夏らしく、軽やかに食べられる料理へ広げる方法をAIに相談。キウイの酸味、ハーブの香り、酢飯のさっぱり感を組み合わせ、発酵のうま味を軸にしながら、果物や香味野菜の使い方を調整して一皿にまとめています。
評価コメント
AIから得た意外性を、発酵や味のバランスに関するご本人の経験で受け止めている点が魅力です。新しさがありながら無理がなく、料理としての完成度と本人らしさが伝わる作品でした。
五感で涼む、夏のしずく。(michiyoさん)

作品について
michiyoさんは、「日本のうだるような暑い夏に、極上の涼を届ける」ことをコンセプトに、冷たい肉料理の弱点である脂の凝固をAIに相談。ポン酢の酸による乳化の考え方や、電気圧力鍋でコラーゲンを引き出すロジックをヒントに、鶏手羽先のうま味を冷やしても楽しめる形へ展開しました。
評価コメント
AIを発想のきっかけだけでなく、調理上の困りごとを解決するために使っている点を高く評価しました。見た目の涼しさ、食べる楽しさ、技術的な工夫が重なり、テーマの解釈にも広がりがあります。
さっくり!ジューシー鶏のマスタード揚げ(磯貝由恵さん)

作品について
磯貝由恵さんは、フランス料理のマスタード使いを出発点に、鶏の揚げものへ応用する方法をAIに相談。マスタードを塗る意味、乳化剤としての働き、卵白衣の軽さ、クミンの香りの生かし方を一つずつ確認しました。試作では、白ワインの有無、衣の違い、粉の種類、しょうゆ味の竜田揚げとの比較まで行い、実際に感じたことをAIへ戻しながら調整しています。
評価コメント
作って終わりではなく、試作で感じた違和感をAIとの対話に戻している点を評価しました。調理理論を確認しながら、自分の手で比較し、材料や工程をシンプルに整えているため、AIを実践的な料理改善の相手として使った好例になっています。
ドライトマトだしの冷製みそ汁(Healthy Toursさん)

作品について
Healthy Toursさんは、自家製梅干しができあがったタイミングで、期限が迫っていたドライトマト、冷蔵庫にあったモロヘイヤを生かせる料理をAIに相談。作っては相談することを繰り返し、かつお節や昆布の代わりにドライトマトのグルタミン酸をだしとして使う、火を使わない冷製みそ汁にたどり着きました。
評価コメント
トマトのうま味をみそ汁に生かす発想は新鮮でありながら、家庭でも試しやすい実用性があります。火を使わない点も夏向きで、AIが日常料理の小さな更新に役立つことを示す作品です。
しらすのパレット和え麺(˚sariya˚さん)

作品について
˚sariya˚さんは、美容部員として一人ひとりに似合う色や質感を選んできた経験から、「アイシャドーパレットを開いたときのワクワク感」を料理で表現したいとAIに相談。カラフルでヘルシーなしらすの和え麺という軸に、色だけでなく、シャキシャキ、カリカリ、ふわふわ、とろとろといった質感、さらに味変オイルの役割までAIと広げました。
評価コメント
ご本人の専門性が出発点にあり、AIがその発想を料理へ橋渡ししている点が個性的です。見た目の楽しさと食材の組み合わせに本人ならではの視点があり、AIで個性を薄めるのではなく広げた作品でした。
流星群フライドポテト(カニザベスさん)

作品について
カニザベスさんは、「もし銀河系にも家庭料理があったら?」という問いからスタートし、「銀河系で今流行っている家庭料理を教えて」とAIに投げかけました。AIから広がった宇宙の食文化や物語を、地球のスーパーで買える食材で再現することに挑戦。流星群のきらめきや口の中ではじける感覚を、フライドポテト、粉チーズ、レモン、パチパチキャンディで表現しています。
評価コメント
未来の家庭料理というテーマに対し、AIの想像力と人間の実作をつなげたところに独自性があります。イメージ先行で終わらせず、手に取りやすい料理へ着地させている点がよく、テーマ2らしい楽しさがありました。
自家製こも豆腐と青パパイヤのポトフ(後藤朋美さん)

作品について
後藤さんは、「未来の家庭料理」は必ずしも斬新でなくてもよいのでは、と考えたところから発想を深めました。地元・岐阜の伝統料理で保存食でもあるこも豆腐を主役に、気候変動を意識した青パパイヤ、プラントベースの考え方、素材を余さず使うアップサイクルの視点を組み合わせ、食材の成分やうま味の相乗効果をAIに確認しながら組み立てています。
評価コメント
「未来」を華やかな新奇性だけでなく、地域の食文化を受け継ぐこととして捉えている点に厚みがあります。AI時代の家庭料理を、人の記憶や土地の食材と結びつけて考えた、落ち着いた説得力のある提案です。
奨励賞 これからの広がりも感じる6作品
寿司のおいしさの構造を移植したオープンサンド(川越 明恵さん)
寿司を食材ではなく、おいしさの構造として分解し、パンやソース、香味の組み合わせへ移した発想が印象的。AIをレシピ生成だけでなく、料理の抽象化と再構成に使った作品です。
五感で涼む五色五味の夏野菜薬膳御膳(Rumiさん)
栄養士・薬膳の知識を土台に、忙しい女性と家族が楽しめる「1時間で5品」の夏野菜薬膳御膳へ発展させた作品。AIの献立提案や視覚化を比較し、家庭で作れる形に整えた点が魅力です。
3層の気候変動スープ『未来の具だくさん豚汁風』(root rinさん)
2050年、プラントベース、懐かしい豚汁という異質な条件をAIと掛け合わせた発想が印象的。未来を予測するだけでなく、食の記憶をどう残すかまで考えた作品です。
ジュニアアスリート飯(ハシヅメチヒロさん)
一皿のレシピにとどまらず、年齢や競技、目的に応じて提案を変えるAIプロンプトまで設計。AIをレシピ生成から、個別最適化の仕組みへ発展させた点がユニークです。
クリームたっぷり まるごと桃のタルト(ei labさん)
桃を丸ごと使う華やかなデザートを、AIに相談しながら制作。完成までの過程が丁寧にまとめられており、AIを身近な相談相手としてレシピづくりに取り入れた素直な好例です。
食べる美容液 腸活パフェ(Vege JOLLYさん)
美容・腸活という目的に対して、AIの提案をそのまま採用せず、家庭で使える材料へ何度も修正。人間の判断を通して、目的と作りやすさを両立させた作品です。
クリエイター
「オレンジページの学校」編集部など、株式会社オレンジページの中の人です。みなさまのお役に立てるよう張り切って運営しています。よろしくお願いします。