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自宅と店舗が一体化! 〈だいどこ道具 ツチキリ〉の店づくり術

自宅と店舗が一体化! 〈だいどこ道具 ツチキリ〉の店づくり術

土切 敬子, 唐澤 理恵

東京・井の頭公園駅近くにあるキッチン用品店〈だいどこ道具 ツチキリ〉店主・土切敬子(つちきり けいこ)さん。デザイナーや主婦としての経験をもとにお店をオープンし、その商品選びや独自の使い方提案が評判です。道具は土切さん自らが使用して選びぬき、店内では実際の生活空間で体感できるなど、〈ツチキリ〉には工夫が豊富。人気を呼ぶお店づくりのコツを伺いました。

目次

  • 住宅街にぽつんとたたずむ、大人気キッチン用品店
  • 自分の強みは何か。それがわかれば、ほかと差別化できる
  • 長く店を続けるために大事なのは、自分を飽きさせないこと

住宅街にぽつんとたたずむ、大人気キッチン用品店

目指したのは、ご近所さんが集まる社交場みたいな店

最寄りの京王線・井の頭公園駅から徒歩で10分弱、静かな住宅街にある〈だいどこ道具 ツチキリ〉。店内にはさまざまなキッチン道具がぎっしりと並びます。
店主の土切敬子さんが店をオープンしたのは、50歳を過ぎてから。デザイナーとして活躍したあと、子育てと主婦を経験。子どもが大学生になったことを機に、もともと好きだったキッチン用品を集めた店をやろうと思い立ったのが始まりでした。

だいどこ道具 ツチキリの入り口 緑に囲まれた扉が店の目印
緑に囲まれた扉が店の目印

決してアクセスがいいとはいえず、しかも周囲は店舗も少ない閑静な住宅地。
それでも遠方から通うファンが絶えないのは、土切さんの〈道具愛〉ゆえ。どの商品にも、土切さんが実際使って「いい!」と思ったポイントがびっしりと書かれたPOPが貼られ、つい読み込んでしまいます。

さらに土切さんがすぐ横にある台所で、おすすめの使い方を実践してくれることも。そう、この店の最大の特徴は、すぐ横に土切家のキッチンとダイニングがある……というより、土切家の自宅の中に店があることなのです。

棚の奥は土切家のリビングダイニング!
棚の奥は土切家のリビングダイニング!

「自分の家なら、実際に道具が生活になじんでいる様子を見てもらうのに一番いいなと思って。きれいな空間に商品がぽんぽんぽんと置いてあっても、それは日常生活とは違う〈ディスプレイ〉になってしまうでしょう?
ご近所の方がふらっと来てお茶を飲んだり雑談したりできる、社交場みたいオープンな空間にしたかったんです。改装をお願いした建築家には、店舗と生活空間の間に仕切りを作って、もっと見えないようにしたほうがいいと言われましたけど(笑)」と土切さん。

学生時代から日常的にキッチン用品を使い比べていたという土切敬子さん

「自宅の中に店!?」猛反対の夫を説得するうち、方向性が見えてきた

店舗と生活空間を区切るのは、数段の階段のみ。今でもときどき、間違って自宅側に入ってしまうお客さんがいるとか。ここまで思いきった店舗を作る計画に、当初猛反対したのが土切さんの夫でした。
「主人がもう厳しくて。『俺の居場所がなくなるじゃないか。どうしてもここで店をやるなら、自分が住んでいる場所を提供するんだから、本気でやってくれなきゃ困る』と……ごもっともなんですけど(笑)」

階段の奥がキッチン。取材中も旦那さんがお茶を飲みに登場
階段の奥がキッチン。取材中も旦那さんがお茶を飲みに登場

「店を始める前は一日5000円程度売り上げがあればいいやと思っていたのですが、夫が『それじゃダメ』。わかってもらうために、何度も事業計画を提出しました。
『ランクの高い作家ものの器や道具を置きたい』といったら、『そんな趣味の店にするわけ?』と返されて。でも、それもそうだなって。やっぱりみなさんに買ってもらって、気に入ってもらわないと意味がありませんから。
夫とのやり取りがあったおかげで、だんだんと自分が本当にやりたいことが見えてきました。結果として今の店のたたき台ができたので、とてもよかったと思います」

今もごく一部、土切さんのお気に入りの作家作品を扱います
作家性の強くない、工業製品との中間のような商品が並ぶ

自分の強みは何か。それがわかれば、ほかと差別化できる

たった数百円。でも「これいい!」と思えるものがうちっぽい

クリエイター

東京・井之頭公園駅近くにある「だいどこ道具 ツチキリ」店主。武蔵野美術大学卒業・同大学院終了後、テキスタイルの企画デザイン、食品関連のアートディレクターを経て、2017年5月「だいどこ道具 ツチキリ」をオープン。自らが使用してから選びぬいた道具は、シンプルで美しく、使い勝手のいいものばかりと評判が高い。

フリーライター。東京・多摩で生まれ育ち、百貨店、出版社勤務を経てフリーランスに。日本各地の店舗や生産者のもとを訪ね、食の媒体を中心に執筆。趣味の飲み歩きが高じ、ライターのかたわら、日本酒やビール、ワインを扱う酒販店にも勤務。

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