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keiさんに聞く 感動を生み出す盛りつけテクニック

keiさんに聞く 感動を生み出す盛りつけテクニック

kei, 高丸 昌子

盛りつけは、料理の最後の大仕事。そのできしだいで、完成した料理をより魅力的に見せることもできれば、残念な印象に転んでしまう可能性も秘めています。
インスタグラマー・keiさんは、ほぼ1日おきに、Instagramで簡単なおつまみやパスタのレシピを発信中。そのセンスよく盛りつけられた美しい写真は目を見張るものがありますが、じつは料理家でもなく、シェフでもないというkeiさん。彼は一体、何者? その素顔と、盛りつけテクニックに迫ります。

目次

  • 「おいしいな」と思う気持ちを分かち合いたい!
  • 感動を生み出す盛りつけのテクニック
  • 食材の探究、料理のブラッシュアップは続く
  • 思いに共感してくれる人たちとの交流を大切にしたい

「おいしいな」と思う気持ちを分かち合いたい!

Instagramのkeiさんのアカウント(@kei______817)をご存知でしょうか? 見たことがあるかたもないかたも、まずはこちらをご覧ください。

Instagram(@kei______817)より。どの投稿も、1枚目は俯瞰の写真で統一されています
アーティスティックな盛りつけがずらりと並びます

筆者は、はじめて見たとき、どこかのレストランのアカウントかと思いました。聞けばkeiさん、過去に料理の仕事に携わった経験があるわけではないのだとか!

「若いころは食に興味がなくて、自炊することもなく、料理の楽しさを知らなかったんです。カジュアルイタリアンのチェーン店で、ピザに具をのせるアルバイトをしていたぐらい」と笑います。

妻の負担を減らすために始めた料理

そんなkeiさんが料理を始めたのは、子育てがきっかけでした。

「娘が3歳ぐらいのとき、まだ夜泣きもするし、めちゃくちゃ手がかかって。フルタイムで働いている妻は疲労困憊でした。なんとか彼女の負担を減らしたいと思い、家事の分担を話し合って、僕が料理を担当することになったんです」

とはいえ、それまではお米も数えるほどしか炊いたことがなく、なにをどうやって作ればいいのかまったくわからない状態。レシピサイトや料理本が頼りだったといいます。

「雑誌の『オレンジページ』にもお世話になりましたよ。最初はただ食べるために作っている感じで、盛りつけも適当でした。それがだんだん楽しくなってきて。レシピ通りにしか作れなかったところから、この材料がないなら代わりにこれを使ってみようかな……とアレンジができるようになっていったんです。少しずつオリジナルが増えると、作った料理の記録を残したいと思うようになりました」

自身の好みの傾向もわかってきたkeiさん。作っていてテンションが上がるもの、おいしいと思うものは、ハーブ、スパイスやナッツを使う料理だと気づきます。ところが……

「妻と娘はハーブやスパイスが嫌いで。とくに子どもはシンプルな味つけが好きなので、ハーブやスパイスが入った僕の料理は、娘には不評(笑)。おいしいなと思うものを作っても、その気持ちを分かち合えない。これを誰かと分かちあいたいなと思ったのがInstagramを始めたきっかけでした」

keiさんのある日の投稿。料理は「シンプルなほど盛りつけがむずかしい」というのが定説ですが、keiさんの絶妙なバランスで美しく盛りつけます

投稿しているのは、基本的にハーブやスパイスを生かせるイタリアンやエスニック系の料理。Instagramに投稿していない日の夕食は、ご家族の好みに寄せて作っているそうです。

投稿を始めてから丸2年。2024年3月現在、フォロワーは1.3万人に達しました。

休日や出勤前に撮影し、休憩時間に投稿

keiさんの本業は介護士。介護施設での仕事は、早番・遅番・夜勤もあるシフト制なので、休日や遅番の出勤前に、投稿する料理の撮影をしています。一人で食べる朝食か昼食が中心で、作ることが多いのは大好きなパスタ。カルパッチョ、サラダなどの簡単なものなら、10分ほどで作れるまでに腕を上げました。

盛りつけが終わると、すぐに窓際のテーブルに運んで自然光で撮影。真上から見る俯瞰、斜めから高さがわかるように、そしてアップなど、最低3パターンを2回ずつ撮ります。

「1回撮って確認すると、落ちているゴミやはねたソース、具材のバランスの悪さなど、肉眼ではわからなかったことに気づくんです。必ずチェックしてから、もう1回撮るようにしています」

ヤムウンセン
こちらは【ヤムウンセン】。keiさんのInstagramの静止画投稿は、1枚目は皿の右側を切った真俯瞰のアングルで統一されています
斜め上からの目線
2枚目は斜め上からの目線
皿全体を入れた真俯瞰
3枚目は皿全体を入れた真俯瞰。このほかにズームアップでシズル感を出した動画も

撮影に使っているのは、iPhone。写真の加工はほとんどしておらず、天候や季節により光が弱くて少し暗いときに、ほかの投稿と合わせるために明るさを調整する程度だそう。

「けっこう古いiPhone11ですが、きれいに撮れるんですよ。カメラも持っているのですが、わざわざ出すのが面倒なので、iPhoneで完結させることにしました。インスタを始めたころは毎日投稿していたので、続けられないと意味がないと思って、このやり方になりました」

料理の完成から撮影まで、だいたい5分ほど。ささっと作って、撮って、食べて、仕事に行くという流れです。夜勤などで忙しくなりそうなときは、撮りためてネタをストックしておくこともあるとか。

レシピを書くのは、仕事の休憩時間中。20分ほどでキャプションを練り、下書きの状態で保存しておきます。「18時ごろ投稿すると決めているので、その2分前にアラームをセットしておいて鳴ったらアップします。仕事の休憩時間、ぜんぜん休憩してませんね(笑)」

感動を生み出す盛りつけのテクニック

「インスタに載せない料理は、今でも大皿でバーンと出しちゃうこともありますよ」と話すkeiさんですが、盛りつけには確固たる理念を持っています。

「料理は、味はもちろんですが、出てきたときの驚きや感動も重要。誰かにふるまうときは、少しでもきれいに見えるよう考えて盛りつけます」

それにしても、料理をはじめてわずか4年とはとても思えないそのテクニック。どうやって身につけたものなのでしょうか。

クリエイター

Instagramで、簡単なイタリアンやエスニックのレシピを中心に、すぐまねできる美しい盛りつけ、短時間でおいしい料理などを発信中。本業は介護士。20代を東京で過ごし、営業職を経験。30歳を目前に地元・青森に戻り、現在は青森市で妻、7歳の娘、愛犬と暮らす。

出版社勤務(飲食業界専門誌、育児誌、料理誌、女性誌など)を経て、フリーランスの編集者・ライターに。食や生活まわりのテーマを中心に、雑誌・書籍・WEBなどで執筆。人物インタビュー、市井の人への取材も大好き。お茶する時空間をこよなく愛する。

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