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“これからの畑”を体感。『オイシクル』の新たな可能性

“これからの畑”を体感。『オイシクル』の新たな可能性

川越 光笑

食品のサブスクで注目される『オイシックス・ラ・大地株式会社』と、農・食・アートが融合する体験型施設『KURKKU FIELDS(クルック フィールズ)』が、2024年5月に合弁会社として『株式会社オイシクル』を設立。“これからの畑”をキーワードに、双方の魅力をかけ合わせた新サービスを展開中です。

その1つである体験型ツアーが『KURKKU FIELDS』で某日開催。両社の代表取締役社長もご登壇とのことで足を運ぶことに。循環型農業の明るい未来への懸け橋は、ここから始まっていたようです。

目次

  • 『オイシクル』が目指すカタチ
  • 『KURKKU FIELDS』という生き物
  • 正しい循環の先にあるもの
  • 「命をいただく」ということ
  • バーチャルではないリアルな未来

『オイシクル』が目指すカタチ

東京から車で約1時間、木更津北I.C.からは車で15分ほどの千葉県木更津市にある『KURKKU FIELDS(クルック フィールズ)』は、約9万坪の広大な敷地で「農」「食」、「アート」そして「自然」を体感できる、サスティナブルファーム&パークとして2019年からオープン。敷地内には、約2万坪という広大なオーガニックファームを所有しています。

→『KURKKU FIELDS(クルック フィールズ)』

豊かな緑が広がる敷地
豊かな緑が広がる/写真提供:OISIX & KURKKU PHOTOGRAPHY
ビニールハウス 敷地 畑
ビニールハウスも複数あり、畑も広大/写真提供:OISIX & KURKKU PHOTOGRAPHY

『KURKKU FIELDS』の代表取締役社長であり、プロデューサーの小林武史さんの願いは、「次の世代も使い続けられる農地へ」。その思いが込められたオーガニックファームは、2010年以前から有機農業を実践。若手農家が開墾から土づくりまで行ってきました。

小林武史さん
小林武史さん。日本を代表する音楽プロデューサー・ソングライター・編曲家・キーボーディスト

今回、業務提携を結んだ『オイシックス・ラ・大地』の代表取締役社長・高島宏平さんと、小林武史さんは以前から親交が深く、お互いをリスペクトしあう存在。高島宏平さんは自他ともに認める『KURKKU FIELDS』のファンで、年に数回は大自然を感じにプライベートで訪れていたとか。

高島宏平さん 小林武史さん
高島宏平さん(左)と小林武史さん(右)

高島宏平さん:
「当初、小林さんから『KURKKU FIELDS』の構想を聞いたときは、広大な荒野から開拓をするというプロジェクトに驚きました。あらゆることを実現されてきたかたですが、さすがに、一体なにを言い出すんだって(笑)。ですが、年を刻むごとに具現化していく姿をみて、本当にやってしまったと……正直、感動しています。

コロナ禍を経て、世の中は確実に変化していきました。コロナ前は“ネット”と“リアル”の区別がありましたが、これからは、“ネット”も“リアル”も、という感じで境目がなくなった。新しい付加価値を『KURKKU FIELDS』といっしょにできたら楽しいだろう、というのが『オイシクル』発足のきっかけです」

小林武史さん:
「高島さんからは、『離婚しないように腰を据えてやっていこう』と打診がありました(笑)。パートナーとしての本気度を感じましたね。
『KURKKU FIELDS』では、2010年以前から有機農業を実践し、太陽光発電の活用や古材の再利用、飼育している動物の排泄物での堆肥活用などを行っています。これらの取り組みを実践しながら、場づくりの中で人も同時に育ってきました。そこに魅力を感じた人々が集まってきてくれた。高島さんもそのひとりでした」

KURKKU FIELDS 手書き
『KURKKU FIELDS』の循環型の取り組み/写真提供:OISIX & KURKKU PHOTOGRAPHY

「何より高島さん自身が、ずっと『KURKKU FIELDS』の1番のファンでいてくれた。事業を連携するうえの決断として、その部分はとても大きかったです。経済性も考えなくてはいけないけれど、経済だけを優先するのではなく、試行錯誤を繰り返しながら、共にさまざまなことにトライしていきたいですね」

オイシックス KURKKU FIELDS ロゴ 高島宏平さん 小林武史さん
それぞれのロゴを掲げる高島宏平さん(左)と小林武史さん(右)

終始、ユーモアを交えながら語るお2人の様子に、信頼し合っている仲間だというのが伝わってきます。これからの事業連携としては、『オイシックス・ラ・大地』では、主に共同開発商品の製造・サイト制作と販売を。KURKKU FIELDS』では、共同開発商品のアドバイザリー、イベント集客・運営支援などを担っていくそうです。

『KURKKU FIELDS』という生き物

百聞は一見に如かず! いざ、『KURKKU FIELDS』の魅力を体感しにフィールドツアーへ。

敷地 カフェ
広大な敷地の一角にはチーズ工房や牛舎なども並びます/写真提供:OISIX & KURKKU PHOTOGRAPHY
自然 風景
どこを見渡しても自然を感じられる風景/写真提供:OISIX & KURKKU PHOTOGRAPHY

朝から降り続いていた雨も止み、雨上がりの澄んだ空気の中を歩いてきました。ツアーガイドには、オーガニックファーム農場長の伊藤雅史さんと、サスティナビリティ担当の吉田和哉さんが同行。持続可能な循環型ファームについてご説明してくださいました。

伊藤雅史さん
オーガニックファーム農場長の伊藤雅史さん/写真提供:OISIX & KURKKU PHOTOGRAPHY
吉田和哉さん
サスティナビリティ担当の吉田和哉さん/写真提供:OISIX & KURKKU PHOTOGRAPHY

オーガニックファーム入口付近では、青々とした葉をつける樹を前に「この樹は何か?」というクイズも。つるっとした光沢のある葉が配られ、少し揉んでみると爽やかな香りが漂いました。まだ実をつけてはいませんが、「レモン」が正解です。

レモンの葉
一人1枚ずつ手渡されたレモンの葉

畑の道中には、ほかにもさまざまな発見がありました。サスティナビリティ担当・吉田和哉さんが、小さな池のほとりに近づいて「これはめずらしい」と足を止めたのです。その目線の先には、モリアオガエルの卵がありました。ふわふわとした綿あめのような卵に、参加者たちから感嘆の声が上がります。

※モリアオガエル(森青蛙)……日本固有種のカエル。おもに森林に生息するが、繁殖期の4〜6月は生息地近くの湖沼や水田などの湿地に集まる。現在は生息地の森林の減少や環境の変化のため、各地で数を減らしているといわれている

吉田和哉さん モリアオガエル 卵
サスティナビリティ担当・吉田和哉さんの手の先にちらりと見える白いものが、モリアオガエルの卵

「この池の水は、排水が水源になっています。排水を微生物や植物の働きで浄化することで、さまざまな生物が暮らせる水質になります。池の中には、カエルをはじめメダカやアメンボなどが育っているため、彼らの環境をよくしてあげるのも僕らの仕事です」と吉田和哉さん。

人の手が加わることで、多様な生き物たちの住処となるビオトープを育む。幾重にも重なる循環が、『KURKKU FIELDS』自体を大きく成長させていることが伝わります。人間と自然との共生で育まれている地球は、私たち人間も自然もどちらも大切な存在だということを教えてくれているかのようでした。

次に見学させてくださったのは堆肥舎。

クリエイター

「ヒトは食べたもので体がつくられる」をモットーに“食と健康”をライフワークとする。日本の食文化に関心が高く、著書に『おにぎり~47都道府県のおにぎりと、米文化のはなし~』(グラフィック社刊)がある。2024年現在、管理栄養士としての執筆活動にも力を注いでいる。

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