Articles
鹿や猪肉メニューだけじゃない!東出昌大さんの料理動画の魅力

鹿や猪肉メニューだけじゃない!東出昌大さんの料理動画の魅力

高田りぶれ

宇宙のように広大なYouTubeに存在する料理動画の中から、強く心惹かれたコンテンツをピックアップ。ライターの視点で見て作って食べて、愛される要因を勝手に考察、称賛する偏愛コラムです。

俳優・東出昌大さんの料理動画を考察

今回のテーマは俳優・東出昌大さんの料理動画。東出さんに興味を持ったのは、2023年にABEMAで配信されたドキュメントバラエティ『世界の果てに、ひろゆき置いてきた』。番組関連動画が1億再生を突破した大ヒットコンテンツです。東出さんは超論理的な人物・ひろゆきさんと過酷なアフリカ横断旅をする相棒として登場。旅の中で数々の報道で作り上げられたイメージとは異なる人間性がさらけ出されていて反響を呼んだ作品です。

その番組の端々で東出さんが料理に対する愛を言葉で行動で表現する場面がありました。現在配信中のひろゆきさんと南米横断する第2弾『世界の果てに、東出・ひろゆき置いてきた』で、以下のように山暮らしでの料理について語っています。

「一番の興味は『食』ですね。着る物、乗り物とか何にお金を使うかっていったら、一番興味があるのは『食』。鹿肉とか山にいるとレパートリーが限られるじゃないですか。でもトルティーヤも作れば火鍋も作る。僕、料理が気晴らしになることがあるんです。『丁寧に生活のことをしている』瞬間がすごく豊かに感じる」

この言葉にとても共感しました。旅の中では普段の山暮らしで行っている、仕留める・解体作業も実施。また東出さんが現地の人々に地元の料理を教わりたいと伝えるシーンが何度も登場。南米の一般家庭の台所で手伝いながら、真剣に料理を習う東出さんの横顔からは、本当に料理が好きなんだなあと感じました。

YouTubeチャンネル「東出昌大」の登録者数は28万人以上

東出さんの山暮らしの模様を公開しているYouTubeチャンネル「東出昌大」は2024年2月にスタートし、登録者数は28万人以上。狩猟免許を持つ東出さんが仕留めた鹿の保存や解体風景などもありますが、メインは東出さんの料理。ガスコンロや冷蔵庫はなく(冷凍庫はあり)、焼いたり、煮たりするのはドラム缶で焚く焚火です。そんな一般的なキッチンとは異なる台所で仕留めた鹿肉や四季折々の野菜、川魚などを使い、レシピも見ずに調理していく。

180cmを超える長身・モデル体型の東出さん。料理の手際の良さも目を引きますが、どんなショットも画になる。料理をしながら、ふるまいながらYouTube撮影ディレクターや訪れる付近の住民たちへの気遣いも見どころ。そして、談笑しながらみんなで一緒に食べる光景がなんとも癒されるんです。動画の中に登場するのは鹿肉や猪肉料理ばかりではなく、普通のスーパーで手に入る材料で作るメニューも多数。その中から、実際に作って食べてみた料理を3品ご紹介します!

豆苗の卵炒め

東出さんの生活に密着し、YouTubeを撮影しているディレクターが食べて「…天才ですね」と絶賛していた一品。今回豆苗1パックの半分を使用し、シャキシャキの豆苗を食べやすい大きさにザクザクカット。味の決め手となる干しエビをみじん切りしたら、一気に仕上げていきます。熱したフライパンにサラダ油を入れ、干しエビを投入。香りが立ったら、卵を入れて軽く塩コショウし、豆苗をドサッと入れる!

ここからはスピード勝負。ナンプラーとしょうゆで味付けし、かつおぶしと白ごま、唐辛子、最後にブラックペッパーで仕上げていく。炒めすぎると豆苗がシナシナになり、水分も出てしまうのでご注意を。豆苗は生でも食べられるのでシャキシャキ感が残る程度に炒めるのがコツです。「野菜炒めは干しエビとナンプラーを入れると劇的にうまくなる」と東出さん。ナンプラーと干しエビを効果的に使うあたりは料理上手ですね。

YouTubeのディレクターさんも「…天才ですね」と絶賛する豆苗の卵炒め

東出さんはビールに合わせていましたが、お酒のおつまみにもごはんにも合うメニュー。エビとナンプラーのうまみ、唐辛子やコショウの辛みも相まってお酒がすすむ!この日、東出さんは地元の方々を自宅に招いて夕食。豆苗の卵炒めのほかに釜土炊き玄米ごはん、とろろ昆布を入れたみそ汁、焼き川魚、ネギや卵とふりかけをたっぷり入れた納豆でおもてなし。地元の方が集まるまでビールを飲み、卵炒めをつまみながら、次々と料理をひとりで仕上げていく東出さん。ディレクターの方にたまに味見をさせたりと、気遣いも忘れないところがさすが。酒を飲みながら作る姿は最高に素敵です。

タンドリーチキン

東出さんがディレクターのリクエストで作っていたタンドリーチキン。鶏肉を流水解凍し、ボウル(代わりの容器)に大きめのひと口大に切った鶏肉をヨーグルト、カルダモン、クミン、フェネグリーク、唐辛子、ナツメグ、シナモン、ターメリック、コショウ、塩とさまざまなスパイス、香辛料を投入(私はカルダモンとフェネグリークはなし、カレー粉と東出さんが入れたかったというパプリカパウダーをIN)。スパイスの種類の多さ、そして小鉢ですりつぶして入れるこだわりも目を引きました。

さらに、にんにくとしょうがの粗みじん切り、ハチミツ、トマト缶少量を入れて混ぜて寝かせる。その間にドラム缶のような炉に火を起こし、知り合いからもらったというルッコラやラディッシュのサラダ、バルサミコ酢とオリーブオイルで自家製ドレッシングを手早く作る東出さん。その包丁さばき、料理が得意な人特有の、無駄がなく、時間を読んだ動きが見ていて心地よい。

寝かせたチキンにローズマリーを入れ、油を熱したフライパンでこんがり両面を焼いてできあがり!東出さんはレモンを絞ったウイスキーの水割りとともに、パクチーやミントを合わせたチキンを食べていました。今回カレー粉の代わりにスパイスを入れて作った感想を「優しい味」と東出さん。スパイシーな味が好きな私にとってはカレー粉を少し入れて正解でした。

ハードルが高そうなタンドリーチキンですが、調味液につけて焼くだけと意外に簡単

ピリ辛派はチリパウダーや唐辛子、コショウを多めに入れるなどしての調整を。焼いている時はあまり動かさず、2~3分ずつじっくり焼くとおいしそうな焦げ目ができます。ハードルが高そうに見えるタンドリーチキンですが、鶏肉を切って調味液につけて焼くだけと意外と簡単でした。

アレンジ辛ラーメン

実は読書家の東出さん。ABEMA『せかはて』の旅にも本を数冊持参していました。移動中に読む姿が目に付き、その中の一冊『死してなお踊れ 一遍上人伝』(栗原康著)を読破。その面白さに圧倒されて以来、東出さんが読む書物を気にするようになりました。YouTubeでも本や作家の話をすることもしばしば。画家でエッセイスト・牧野伊三夫さんの食エッセイ『カボチャを塩で煮る』の話も興味深かったです。

作家で探検家の角幡唯介さんの話をしながら、作っていたのが辛ラーメン。角幡さんが極地探検に行くときに持参するのが辛ラーメンなんだとか。カプサイシンで体が温まり、油で揚げた麺だからカロリー摂取にもよい。角幡さんの本を読んで極地探検に憧れ、極地ではなく都心で辛ラーメンばかり食べていた時期があったそう。

カプサイシンで体が温まる辛ラーメン。極地探検の気分で食べるのが東出スタイル

お湯を沸かして麺と薬味を入れ、斜め切りしたネギと粉末スープを投入。アレンジとしてたまご、たっぷりのシュレッドチーズと黒コショウ、唐辛子をかけて蓋をして煮込む。食べる直前に韓国のりをパラパラ。チーズの甘さで緩和された辛みを取り戻すべく、黒コショウと唐辛子で刺激をプラス。辛ラーメンは私も大好き。やっぱり辛ラーメンは辛くないと(笑)食を愛し、本も愛する東出さんの思い出が詰まったメニューでした。

クリエイター

元放送作家のライター。「おもしろいものをわかりやすく伝える」がモットー。最近は、著名人へのインタビューやイベントレポート、バラエティ番組解説などを担当。コロナ禍に料理に目覚めるとともに、レシピ動画や本の奥深い魅力に気付く。

SNSでシェアする

いま注目のテーマ