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怪奇菓子職人・ナカニシア由ミさんが「怪奇菓子」1本で生計を立てるまで

怪奇菓子職人・ナカニシア由ミさんが「怪奇菓子」1本で生計を立てるまで

ナカニシ ア由ミ, 土屋 朋代

「怪奇菓子職人」という、思わず二度見してしまうワード。ホラー映画に出てくるようなものをおいしい洋菓子で再現する、パティシエ・ナカニシア由ミさんの独特な肩書です。もともとパティシエだったわけではなく、過去にはアニマルトリマーだったというのが驚き。異業種からなぜ「怪奇菓子」にたどり着いたのか、その道のりを伺いました。

目次

  • 「怪奇菓子」とは……?
  • キャラ弁のリクエストがホラー菓子を生み出した
  • 型にはまらぬフレキシブルな発想で販路を拡大
  • 個性を生かしニッチなスペースに居場所を確立

「怪奇菓子」とは……?

「目玉ゼリー」に「指クッキー」、「脳みそケーキ」……。「中西怪奇菓子工房。」のナカニシア由ミさんが作る「怪奇菓子」は、ネーミングだけでもインパクト大ですが、特筆すべきはそのビジュアル。食べるのをちょっぴり躊躇してしまうほどのリアルさで、手にした人を恐怖と好奇心が入り混じる不思議な世界へ誘います。

目玉ゼリーと脳みそレアチーズを組み合わせた「脳みそ目玉ケーキ」

なんとも狂気あふれるスイーツですが、見れば見るほど工夫や遊び心がたっぷり。
目玉モチーフのお菓子はチョコレートとホワイトゼリーの2タイプ。チョコレートタイプは、ココアクッキーにホワイトチョコをコーティングし、乾燥いちごのパウダーをオン。ホワイトゼリーのタイプは、白目は乳酸飲料、黒目はコーヒー寒天で、ごていねいにラズベリーピューレで彩った「充血あり」と、プレーンな「充血なし」の、さらに2タイプが用意されています。

数々のメディアでも紹介された「目玉ゼリー」

腐った指を模した「指クッキー」は、つめの下から漏れ浮き出た血をカシスジャム、骨をプレッエル、朽ちかけたつめをピーナッツで表現しています。

つめの生え際から滲み出た血がリアルな「指クッキー」

そして、「脳みそレアチーズ」は、リアルな脳みその形をしたふんわり食感のチーズケーキの中から、真っ赤なカシスジャムがとろりとあふれるサイコパス仕様。

ナイフが入れづらい衝撃作「脳みそレアチーズ」

「どれも見た目とは裏腹に、味はちゃんとおいしいんですよ。そのギャップが逆に複雑な気持ちにさせるようですが(笑)」とナカニシさん。

「毒々しいと思われるけれど、なるべく自然の食材の色や質感を使って表現しています。こだわりは“おいしいこと”と、“できるかぎり着色料を使わないこと”。ビジュアルばかりでおいしくないものは嫌ですし、子どもたちにも楽しんでほしいので、安心して食べられるお菓子でありたいんです」

キャラ弁のリクエストがホラー菓子を生み出した

ナカニシア由ミさんは大阪府池田市出身。現在は、お隣の豊中市でお子さんと暮らすシングルマザーで、この「怪奇菓子」1本で生計を立てています。
以前は、短大卒業後に移住したニューヨークでアニマルトリマーとして勤務。帰国後は、お子さんが犬猫アレルギーを発症したこともあり、ホテルに転職。2014年までフロントスタッフとして働いていました。
お菓子作りとはまったく異なる分野からの転身ですが、どんなきっかけがあったのでしょうか。

クリエイター

「中西怪奇菓子工房。」工房長。短大卒業後ニューヨークへ渡米。アニマルトリマーとして活躍も、ビザ切れで強制送還。その後趣味のホラー弁当作りを経て、2014年「中西怪奇菓子工房。」を設立。怪奇菓子(ホラー菓子)職人として、全国にスイーツと悲鳴をお届けして今に至る。お菓子とモフモフしたものが大好き。

フリーライター。『地球の歩き方』や『ことりっぷ』などの旅行誌を中心に、紙・ウェブ問わずさまざまな媒体の企画や取材、編集、執筆を手がける。あるときはインド仕込みのヨガインストラクター、東京 下北沢にある場末酒場のバーテンダーなど、別の姿も。

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