子どものころに遊んだお人形のおままごとセットを思い出すような、超ミニサイズのかわいいスイーツ! 見ているだけで、ほっこり癒やされます。miny(みにぃ)さんも、そんなミニチュアフードに魅せられた一人。今は作家さんとして制作・販売を手掛けていらっしゃいます。今回はそんなminyさんに、ミニチュアフードの魅力と制作の裏側を伺いました。
目次
- 子どものころから夢中になっていたミニチュアの世界
- 約2カ月かけて生み出される渾身の一作
- まずは自分の活動を知ってもらうことが大切
- 教室には、独学では得られないヒントがいっぱい
子どものころから夢中になっていたミニチュアの世界
「子どものころから、ミニチュアのおもちゃが大好きだったんです」とminyさん。かくいう私(ライター)も、子どものころにリカちゃんやシルバニアファミリーでよく遊んでいて、人形用の家具やアクセサリーに心をときめかせていました。
「身近にあるものがミニチュアになっているだけで、なんだかワクワクしますよね。家具やアクセサリーもかわいいですが、私はやっぱり食べ物のミニチュアにテンションが上がります。もともと食べることが大好きで、とくに甘いスイーツには目がありません。ミニチュアの作品でもスイーツを作ることが多いです」
そんなminyさんが初めて制作したのは、まぐろのおすし。現在も通われているミニチュア教室に通いはじめて、最初の課題となった作品です。
「もともとミニチュアは『見る専門』だったのですが、あるとき、ふと本屋さんで手に取ったミニチュアフードの本を見て、そのクオリティの高さにびっくりしたんです。とにかくリアルで、おいしそうで、その世界観に吸い込まれました。
その本には作り方も載っていたので早速チャレンジしてみたのですが……甘かったですね。全然うまくできなくて、ただの粘土の塊が完成(笑)。何度も挑戦しましたが、粘土の山が高く積み上がるばかりでした。
そうなると、もう独学でつくるのは無理だなと。そこで教室に通い始めたんです。先ほどのミニチュアフードの本というのが、ミニチュア作家・田中智(とも)先生の本(※)だったのですが、ちょうど先生の教室が自宅から通える場所にあったので申し込みました。
といっても、さすが人気作家さんの教室。そもそも4ヶ月に1度の募集なのですが、常に満席で。なんとか申し込めたのが1年後でした」
「そこで最初に作ったのが、まぐろずしです。実際に作る前に、先生の作品を見せてもらったのですが、1/12は想像以上に小さかったですね。写真ではたくさん見ていましたが、実物を前にすると驚きました」
「作品が小さいぶん、作り方にもいろいろな工夫があって、一言でいうと『斬新』。教室に通っていなかったら、絶対思いつくことはなかっただろうし、きっと“見る専門”のままでいたと思います。先生の教室に通いはじめて、今年2024年で4年目になりますが、まだまだ学ぶことが多く、楽しく通っています」
約2カ月かけて生み出される渾身の一作
最近はInstagramでの発信のほかに、イベントへの出展、ハンドメイドマーケット「minne byGMOペパボ(以下、minne)」での販売もはじめて、教室で出される課題以外の作品づくりもスタートさせているminyさん。その制作過程を少し伺いました。
「教室では基本的に課題が出されますが、初めて自分で作品のテーマを考えたのは、教室主催のイベントに初出展したとき。教室では年に1回、田中智(とも)先生が企画して、教室に通う生徒さんや先生とお付き合いのある作家さんなどが参加するイベントを開催していたんです。
そのときは約90名の作品が出展されました。ちょうどコロナ禍だったので、展示も販売もオンラインでの開催でしたが、おかげで〈minne〉での販売方法を知ることができて、今の販売につながっています」
「当時も今も、テーマを決めて最初の1個を作るまでがいちばん大変ですね。甘いものや果物が大好きなので、どうしてもフルーツをたっぷり使ったスイーツの作品が多くなるのですが、実際のお店にありそうな、ついつい写真を撮ってしまいたくなるようなものづくりを目指しています。なので『かわいいな』『食べちゃいたいな』と思ってもらえるのが、いちばんうれしいです」
「そのためにはリサーチも必要。Instagramでいろいろな作家さんの作品を見たり、本を見たりもしますが、やっぱり実物を見て実際に『味わう』のも大切かと(笑)。もともと休日は外食が多いので、気になるメニューがあればそのお店に行って食べてみます。そうこうしていると、作品に取り掛かるまでに1週間ぐらいかかっていますね。
とりあえず手を動かし始めていくと、だんだん世界観が定まってきます。自分の中で『これだ!』と決まるのに約1カ月ぐらいでしょうか。ここまでくれば、あとは量産するのみ。1回で同じものを、自分の保管用に1個、販売用に5個、計6個つくるので、全部完成するまでに2~3週間。なので、合計すると1種類の作品に2カ月ぐらいかかっています」
「作品の素材は、ほぼ樹脂粘土。ふつうの絵の具で色づけして使います。ただ、樹脂粘土は扱いやすいぶん難点もあって……。というのも、まず乾いて固まるまでにすごく時間がかかるんです。ものによっては丸一日かかります。そして、乾くとちょっと縮むんですよ。
この『縮む』が意外と厄介。毎回縮むぶんも計算したうえで、何種類か違う大きさのものをつくっておくのですが、それでも『あれ?』っていうことが多くて。とはいえ一度固まってしまったらどうしようもないので、一からつくり直すことも少なくありません」
「素材以外の道具としては、いわゆる粘土細工用の道具も使いますが、つま楊枝とかストローとか、いっけん道具とは思えないものも結構活躍します。
形づくりでいちばんむずかしいのが『丸』なので、丸く型抜きできる道具は大小さまざま常備していますよ。あと、絶対欠かせないのがピンセットと拡大鏡。これがないとつくれません!」
そうやって、ていねいにつくられていく作品たち。しかし、販売するにはもうひと工夫必要とのこと。
「私の作品は、基本的に観賞用です。なのでスイーツ単品よりもカトラリーなどを充実させ、パッケージにして見せた方が世界観も伝わりやすいんです。外箱のケースは田中智先生のところで販売されているものを使っていますが、お皿やカトラリー、台紙などはすべて手作りして組み合わせています。
なかには粘土で作るのがむずかしいものもあります。そういったものは、紙やプラ板を使いますが、じつは最近、3Dプリンターを導入しました。制作に取り入れるようにしたら、すごくはかどって! 作品の幅も広がってきた気がします」
まずは自分の活動を知ってもらうことが大切
クリエイター
1/12サイズのミニチュアフードを制作・販売。幼少のころから小さくてかわいいものが大好きで、大人になり自ら制作するように。現在もミニチュア教室に通いながら、作品はハンドメイドマーケットにて不定期で販売。Instagramでは制作したミニチュアフードの写真を掲載中。
フリーライター。大学卒業後、編集プロダクションを経て、フリーランスに。インタビューや生活まわりの記事を中心に執筆・編集を行っているが、基本的には「なんでも書きます」の雑食系ライター。