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【ロバート馬場・チュート徳井・アイン河井】芸人さんの料理動画を考察

【ロバート馬場・チュート徳井・アイン河井】芸人さんの料理動画を考察

高田りぶれ

宇宙のように広大なYouTubeに存在する料理動画の中から、強く心惹かれたコンテンツをピックアップ。ライターの視点で見て作って食べて、愛される要因を勝手に考察、称賛する偏愛コラムです。

今回のテーマはお笑い芸人さんの料理動画。ダウンタウンのラジオを聴いてお笑いにハマり、ライブへ通ううちに放送作家の道へ。お笑いライブの構成も担当し、夜中から始めるネタ作りや稽古など笑いを生み出す熱い現場でストイックな姿を目撃。セリフや衣装、効果音、BGM…ネタを形成するひとつひとつにとことんこだわり尽くす…今でもその頃の印象が強く、芸人さんにはハンパないリスペクトがあります。

ロバート 馬場裕之さんの料理動画

THE よしもとの料理芸人

日本各地のテレビ局で料理番組を持つ、料理芸人の先駆け的存在のロバート馬場裕之さん。自身の料理YouTube「馬場ごはん〈ロバート〉Baba’s Kitchen」を始めたのは2020年から。チャンネル登録者数 123万人以上、230 本以上の料理動画をアップしています。

紹介しているのは初心者でも安心な「馬場流お手軽レシピ」。スタート当初はコロナ禍。まるで実験室のような自宅キッチンからの配信でした。試行錯誤しながら、レシピを一生懸命伝えようとする姿に癒され励まされたものです。キッチンにある馬場さん愛用の調味料や調理グッズを使いながらの料理も楽しみでした。

現在は素敵なキッチンスタジオで撮影していますが、自宅キッチンの頃から変わらず、入手しやすい材料で工程が少なく、簡単に作れる料理のレシピを紹介。調理をしながら、気を付けたいポイントを口頭とテロップで説明。文字情報があるとインプットされやすいからありがたい。コスパもタイパもよく、洗い物も少な目。メニューもごはん、麺類などの主食系、肉や野菜のメイン系、常備菜も網羅。ちょっとハードルが上がる?魚系はツナやサバ缶を使用して作りやすさを優先しています。こういった料理初心者への優しさ、わかりやすさが高い再生数に現れているのではないでしょうか。

元放送作家目線で気になってしまうのは、突然飛び出す馬場さんの「狂気じみたアクション」(野菜を入れたビニール袋を何かに取りつかれたように振る瞬間など)。終始ほんわかムードの料理芸人馬場ちゃんから、「キングオブコント2021」王者に輝いたコント師・ロバート馬場が不意打ちで漏れ出す瞬間はお笑いファンにはたまりません。

簡単常備菜「ポリポリきゅうり」を作ってみました

900万回、880万回、600万回など高い再生数を叩き出している馬場さんの料理レシピ。その中でもお気に入りが「【母ちゃん直伝】ポリポリきゅうり&夏野菜の浅漬け2種〈簡単♪常備菜〉」のレシピ動画。馬場さんの実家で母親が作っていたという野菜の常備菜2種から、我が家の定番になったのが「きゅうりの中華風」です。

馬場さんの「ポリポリきゅうり&夏野菜の浅漬け2種」を作ってみました!今では我が家の定番に

輪切りにしたきゅうりを砂糖と一緒にビニール袋に入れて水を抜くという方法はこのレシピで初めて知りました。砂糖の親水性を使うこの方法。空気を抜いて10分置くと「パリっとがコリっと」食感に。水分を絞って酢と醤油とラー油、いりごまで仕上げ。砂糖がきゅうりに浸透しすぎず、激甘にならないのが不思議。ほどよいマイルドな甘さとラー油の辛さがクセになり、すっかり我が家の定番おつまみに。このピリ辛きゅうりを食べて「無限ですね」と馬場さん。この言葉に偽りはありません。

チュートリアル 徳井義実さんの料理動画

黙食「こじらせ飯」で新境地 

「M-1グランプリ2006」で王者に輝いたチュートリアル徳井義実さんのYouTubeチャンネル「徳井video」。2021年から開始して登録者数 63万人超え、これまで460 本以上の動画を配信しています。料理、キャンプ、バイク、飼っている猫たちの動画など多趣味な徳井さんのプライベートが垣間見える人気チャンネルです。

かつて「吉本男前ランキング」で上位を独占、殿堂入りしたハンサム芸人の草分けである徳井さん。しかし、過去には「エロ三羽烏」という芸人ユニットでライブを行っていた変態性を持ち合わせていたせいか…いまだ独身貴族。そんなこじらせハンサム・徳井さんのたまらない魅力が料理動画に凝縮されています。

今田耕司さんや又吉直樹さんら独身芸人が集まってのにぎやかな「アローン会」で徳井さんがふるまうキャンプ料理(メスティンで揚げる串揚げ、鶏肉のチーズソースがけ)など、にぎやかな動画もおいしそうで楽しいですが、個人的なお気に入りは「こじらせ飯」。徳井さんがひとり無言で料理を作り、食事をする黙食動画です。

アラフィフ独身ハンサムが醸し出すなんともいえない哀愁、色気が駄々洩れる動画に本人が当時の状況、心境、調理工程や裏話を淡々と音声で実況するコメンタリーがまたいい。作った料理をリビングで猫と戯れながら食する、キッチンでただひとり焼肉を楽しむ「台所焼肉」、お酒とともにアツアツのキャンプ料理を食べるソロキャンプとバリエーションも豊か。

すべての黙食をエモーショナルに盛り上げるのではなく、あえて落ち着いたトーンで伝えていく。ずっとBGMのように静かなエロさ、変態性が漂っているのがたまらない。“こじらせ飯”動画は「徳井video」の核であり、真骨頂ではないかと。ミドルエイジのハンサム芸人が到達した新境地をのぞいてみて。

こじらせ飯「残り物クリームスパゲティ」をつくってみました

黙食コメンタリー動画「こじらせ飯」シリーズから、白菜と生クリーム、ウインナー、バター、パルメザンチーズで作る残り物パスタをチョイス。ソロキャンプや普段の料理で生クリームを多用する徳井さん宅と異なり、我が家では生クリームはあまり使わないので豆乳で代用しました。

白菜を食べやすい細切りに、2本を斜めに切って表面積を稼ぐ工夫からは料理上手な一面が。具材を炒めてソースを煮詰め、バターとパルメザンチーズを大量投入して濃厚に。ゆでた麺を合わせる前にソースの火加減を強めて再度煮立たせるなど細かいコツの説明も。味付けは塩とこしょうだけというシンプルな工程もズボラにはありがたいレシピでした。

徳井さんのこじらせ飯から「残り物クリームスパゲティ」を作ってみました!煮詰めたソースがリッチな味わい

ハードル高めな印象のクリームパスタですが、材料が少なく簡単。煮詰めたソースがなんともリッチ。初の白菜パスタのトロトロなおいしさに新たな可能性を感じました。動画の途中、トングで刻んだリズムとともに流れるPUFFYの「渚にまつわるエトセトラ」で遊び心も。もくもくと食べている自分に俯瞰目線でツッコミを入れるコメンタリーもクセになります。

アインシュタイン 河井ゆずるさんの料理動画

おしゃれすぎて笑えるんです

人気お笑いコンビのアインシュタインの公式YouTubeチャンネル「アインシュタインのYouTubeシュタイン」。2020年から配信を開始し、登録者数は24万人以上、420本以上の動画をアップしています。稲田直樹さんと河井ゆずるさんがコンビでさまざまな企画にチャレンジ、収録やライブの裏側密着、2人のプライベートも公開するなどテレビ番組とはまた違った濃いアインシュタインの魅力が詰まったチャンネルです。

一番人気の動画は324万回再生の「【モーニングルーティンくらべてみた】アインシュタイン河井と稲田の朝の過ごし方」。ドローンで髪を乾かす稲田さんの姿、河井さんの朝からの徹底しすぎているスキンケアも狂気じみていて衝撃的。稲田さんの寝起き顔サムネイルがとにかく強いので現在も再生回数を伸ばしているかもしれません。

豊富な企画の中で私のおもしろ琴線に触れたのは河井さんのこだわりがすぎる料理シリーズ「ゆずる‘sキッチン」。大量の観葉植物に囲まれたおしゃれな自宅キッチンでもくもくと料理を作る様子を映したもの。高級土鍋で米を炊く、極上のハイボールを作る、具なしの至高ペペロンチーノを作る、極上のアイスコーヒーを作る…などこれまで数品を披露。

淡々と黙って調理する動画で分量やポイントの紹介はなし。徳井さんのようなコメンタリーもないので、調理の工程に投入される過剰なこだわりを入れ込んでいくさまを楽しむ。調理する中でさりげなく見せる料理上手ならではの技術やコツがおしゃれなんですが、見ているとなぜかクスクス笑えてくる。ツッコミながら見るのが正解な料理動画ですね。

こだわり満載の「男のフレンチトースト」をつくってみた

河井さんの料理シリーズの中から「こだわり抜いた、男のフレンチトースト。 ゆずる’sキッチン ep5」をチョイスしました。見取り図YouTubeチャンネルとのコラボで盛山さんとリリーさんがツッコミまくった河井さんのルームツアー動画も見て欲しいのですが、とにかく多い観葉植物も見どころ。まるでジャングルの中でもくもくと料理している真顔の河井さんにまず笑えます。

フレンチトーストの材料は馬場さんのレシピ動画のように表示されませんのでご注意を。動画を見ながら、なんとなく牛乳、卵1個、砂糖とハチミツをボウルに投入しました。そして、フライパンに卵液とパンを入れて一晩浸すという手法は今までにない発見。一晩置いてすべて卵液を吸収しつくしたパンをたっぷりのバターで焼き上げると、しっとりふわふわでお店のような味に。

「こだわり抜いた、男のフレンチトースト」を作ってみました!しっとりふわふわでお店のような味

四枚切りの厚切りパン2つに切って焼きましたが、1枚で大満足のボリューム。ハチミツに加え、シナモンパウダーをかけるのもおすすめです。

クリエイター

元放送作家のライター。「おもしろいものをわかりやすく伝える」がモットー。最近は、著名人へのインタビューやイベントレポート、バラエティ番組解説などを担当。コロナ禍に料理に目覚めるとともに、レシピ動画や本の奥深い魅力に気付く。

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