東京にてお菓子教室「MARIMO CAFE」を主宰し、製菓の通信講座や撮影講座を行い、レシピ本も出版している菓子研究家・marimoさん。前職は大手印刷会社の会社員で、一時は菓子研究家と二足のわらじで活動していたというmarimoさんに、下積み時代の苦労から独立に至るまでの経緯と、経験から得た独立するための心構えをお話いただきました。
目次
- パティシエではなく〈菓子研究家〉を目指した理由
- 会社員と菓子研究家、二足のわらじを7年経験
- 独立前に心がけていたこと&大切だと思うもの
- 独立後して感じる会社員時代とは違う〈時間とお金〉
パティシエではなく〈菓子研究家〉を目指した理由
きっかけは喫茶店を営んでいた叔母
私がお菓子作りに目覚めたのは、大学生のとき。手作りのお菓子を出す叔母の喫茶店でアルバイトを始めて、お菓子作りを教わるようになったのがきっかけです。じつは、市販のお菓子や洋菓子店のスイーツは、私にとっては甘すぎて、あまり好きではなかったんですよ。でも、手作りすれば甘さの調節ができるってことがわかって、自分好みのオリジナルレシピを作るようになりました。
それからは、レシピ作りに夢中に。そのうちに、家族だけでは消費しきれない量のお菓子ができてしまって……。それを友人に食べてもらったときに、「お菓子作りの才能がある!」と褒めてもらったのがうれしくて、どんどんお菓子作りにのめり込んでいきました。言った本人は忘れていると思いますが(笑)。
そして、自分の記録用にとブログを始めて、作ったお菓子の写真とレシピを投稿し始めました。あるとき、そのレシピを見て実際に作った読者さんが「とてもおいしかったです」というコメントをくれて。それがきっかけで、「もっと褒めてもらえるレシピを作りたい」と思うようになりました。
新しいお菓子を生み出したいから菓子研究家に
お菓子の仕事というとパティシエ(洋菓子職人)が一般的ですが、私には毎日同じお菓子を作るのは向いていないなと気づいたんですよね。大学生のころにレストランでもアルバイトをしていて、そこでお菓子を作らせてもらっていたんですが、毎日プリンとシフォンケーキを作ることに楽しさを感じられなくて。そのとき、「私は新しいお菓子を生み出すのが好きなんだ!」と気づきました。
そこで、お菓子のレシピを考える仕事に就きたいと思ったんです。そのためには、ある程度の人脈や社会人経験が必要だと考え、まずはその土台作りのための社会人経験をしたくて、大学卒業後は就職を選びました。
会社員と菓子研究家、二足のわらじを7年経験
よりおいしいお菓子が作れるよう製菓学校で勉強
社会人2年目から2年間、製菓学校に通いました。それは、ブログの読者さんから、独学では答えられないような質問をされる機会が増えてきたからです。 それがもどかしかったのと、感覚だけでおいしく作れるレベルでは今後仕事にはできないと思ったので、土日やお盆休みなどの長期休暇を利用して製菓理論や技術を基礎から勉強。
遠い場所に学校があったので、実習の日は早起きが必須でしたが、当時は若かったので、体力的に多少きついかな、くらいで、さほど大変には感じていませんでした。新しいことを学ぶ喜びのほうが大きかった気がします。
副業禁止ではなかったけど隠れて活動する日々
会社には、「ほかの会社に雇われてはいけない」というような規則があったんですが、個人でやるぶんには自由な部分があって。当時は副業をしている人がほとんどいなかったので、そのあたりの規則が曖昧でしたね。でも万が一、ばれて首になるのも怖かったので、会社や同僚には黙っていました。
もともとブログも本名ではやっていなかったし、顔出しもしていなかったので。 そもそも、ブログでお菓子のレシピを公開していましたが、それを収入にしようとしてやっていなかったので、副業っていう意識は全然なかったというのが当時の正直な気持ちですね。
初の自分の本が出版されることに! でも……?
入社2年目で、幸運にもブログをまとめた本を出版させていただけることになって。でも、最初に出版社さんからお声がけいただいたときには、詐欺だと思ったんですよね(笑)。本を出版しますよって言って、あとでお金を取られるんじゃないかって。でも、出版社を調べたら、ちゃんとした会社っぽいから大丈夫そう、お金を払わなくていいみたい、とわかり安心しました。
本業と副業を同時にこなすうえでの苦労とは?
クリエイター
菓子研究家、製菓衛生師。「marimo cafe」 代表。お菓子教室「MARIMO CAFE」を開講し、製菓の通信講座、撮影講座も行う。きめ細やかな指導、再現性の高いレシピ、美しい写真でSNSでも人気。著書『本当においしいお菓子の作り方』(KADOKAWA)など。
編集・ライター。インテリア誌や生活情報誌の編集職を経て、40歳を過ぎてからフリーランスに。家事、収納、マネー、リノベーション、インテリア、料理など携わるジャンルは多岐に渡る。投げられた球はどんな変化球でもとりあえず打ち返すタイプ。